生徒会朧月夜 04
(それは、人を信じなくなった者たちの悲しき結末)
「?何だと?取引中に邪魔が入った?」
一人の老人がそう呟いた。
凛とした低い声はそれだけでかなりの威圧感がある。
「ハイ今電話で・・・、そ、れが・・・」
部下の戸惑いように老人が尋ねる。
「?何だ、早く言え」
「椋嬢が、その中、・・・に」
「何だと…?…、」
「…赤い髪の女だと、間違いないようです、」
「少しお仕置が必要なようだな、あのバカ娘…」
「いかがしますか…」
「・・・、迎えにいってやれ、」
「わかりました」
「あー。おわったー、終わったー」
紅い髪の長身の女が男口調でそう元気に言う。
「今日も椋ちゃんは足ひっぱっただけだったね」
「そーだねーぇ」
「そうだな」
「お前らおい!!!」
「?何?」
「何じゃなくってさ???何でだよ?!」
あの後、やくざ達はのたれて倒れた。
幸い一般の客は出入りしておらず、全員が薬中のやつ等ばかり。
ならば、と玲稀が脅すように「警察へ通報されてほしくなかったら、お前ら、全員余計なこというんじゃ、ねぇぞ」と言い黙らせ、店を出た。
そんな話の流れだ。一緒になぜかでてきてしまった聖凛サイドの中で準が声を荒げる。
「何で?って何が?」
主語なしに尋ねられたら誰だってわからない。
梓が準の言葉に尋ね返す。すると準から想定外の言葉が聞かされる。
「何でナカマが人質にとられてんのに、拳銃なんてむけれんだよ…!!」
「「「・・・は?」」」
準の言葉に、玲稀・雪・梓の3人の声がかぶる。
そして、暫く顔を見合わせて黙り込んだ。
「なーんだー、そんな事かー」
最初に口を開いたのは梓。そういいながら携帯を取り出す。
「そんな事って!もし5cmでもずれたらこいつ死んだかもしれないんだぜ?!」
梓の言葉を理解できなかったのか、準はより一層声をあげた。
「・・・準、お前の気持ちはわかるがそのくらいに」
「わかんねーよ!!!!何で仲間同士で傷つけあうようなことー」
「んなもん、綺麗事だろ…?」
準の叫びを遮ったのは、玲稀。
準を止めに入った拓、そして、ソノ場にいた全員が玲稀を見た。
「!な・・・っ」
「んなん綺麗事だっつってんの」
「・・・んな訳ねーじゃん!!」
「じゃ、何ならやってやろーか?」
「・・・は?」
人気のない公園に、ただただ準の気の抜けた声が響いた。
今、この女はなんていったのか。「じゃ、何ならやってやろーか?」何をするって言うんだ。
話の趣旨が全く読めない。
「椋こっちこい」
「はぁ・・・?」
突如名前を呼ばれ果てしなく嫌な予感がした椋。
しかし、そんな椋の表情をみて玲稀が言う。
「いーから来い」
「あ?あぁ…」
玲稀に睨みつけられてはどうすることも出来ない。
凄い嫌な予感は心の隅にしまった、テクテクと玲稀の所へ歩いて行く。
玲稀は手に持っていた煙草を口にくわえると、胸ポケットからさっきうった拳銃をとりだし。
そして、椋の頭に突きつける。
「あーあー。会長えらくご機嫌斜めじゃね?マ。しゃーないかー」
「面倒くさいなぁーー」
「・・・・・・れ、玲稀、ちゃん・・・?」
「椋、すまんが死んでくれ」
「「「!!!!!!」」」
聖凛サイドの拓以外が一気に目を見開く。
「・・・!!うっそ!!!!」
椋の嫌な予感は嫌なくらいに的中してしまった。
ちょ、勘弁・・・!と声を上げると玲稀は凛と返してくる。
「ばり本気」
そんな玲稀の声に準が叫ぶ。
「―何でだよ!!ナカマじゃ!!」
「ナカマナカマってうっせぇんだよ!!!!!!」
準の声に今度は玲稀が声を荒げた。
真っ暗な公園の中、話し声までもが静まり返る。
「仲間、仲間ってな、そういうのごめんなんだよ、面倒くせぇ、所詮一人じゃ生きれない奴のいい訳だろ。んなんに頼ってるくらいならなテメェでテメェの頭ぶち抜いて、死んだ方が増しだっつんだよ」
「・・・っ!!!」
「って訳だ、椋、死んでくれ」
「ちょ!タ!たんまー!!まってまだやりきってねーゲームあんだって…!!
せめて、明日、いや来週にでも…!!っていうか、ぶち抜くテメェの頭って俺の頭?!」
「おー。じゃー葬式にはそのゲーム菊の変わりに棺桶のなかにいれてやらー」
「ちょ、死ぬ時は綺麗な姉さんと一緒にって・・・っ!」
椋の声。玲稀の声。黙り込んでみている雪と梓。
その瞬間、固まってた聖凛サイドからおっとりした感じの声の男。会計の宮坂拓が割って入ってくる。
「ストップ」
「んだよ」
手を掴まれて、銃も掴む拓。
玲稀は、そんな拓を軽く睨みながらも言う。
「・・・それってさ?楽しい?」
「・・・別に」
両者の瞳がかぶりぶつかる。お互いに冷たい瞳だ。
今、コイツラと目をあわせたら完璧に暫くは外に出たくなくなる。
「じゃあ、やめれば?」
拓の言葉に玲稀は考えるように瞳をとじた。
否、もしかしたら何も考えていないかもしれない。
暫く黙っている玲稀に雪が声をかける。
「玲稀」
「何だ、雪」
「・・・帰ろーぜ」
雪の声に、ゆっくりと瞳を開ける玲稀。
その間も誰も喋ろうとしない。
ゆっくりと、銃を下に下ろしたのを確認すると拓は玲稀を軽く見つめたがスグに準の所へ歩いていく。
「気はすんだ?準?」
「・・・・・・、わかんねぇ、わかん、ねぇ、よ…」
そんな準の声に玲稀は低い鉄棒からひょいっとおりると、髪の毛をかき上げながら言う。
「・・・、わかんなくっていーんだよ、お前みたいなの、は」
「え・・・?」
どこか感情のこもっているいい方に準は振り向く。
玲稀と一瞬目があった。暗くてよく見えないけれどはっきりと意思のある瞳。
その瞳が一瞬濁っていた。
準は不安に思いながらも声が出せずに玲稀をただみる。
すると、次の瞬間健が声をあげた。
「!!すげぇ・・・!!何だよアレ!!!」
「・・・す、すげ・・・、」
「・・・(うちにもあるぞ、あんなの)」
「・・・でも、あの車・・・」
その車をみての聖凛側の個々の感想。当然のことだ、仕方ないだろう。
いくら金持ち校で金持ちの御曹司といってもお迎えまではさせないのが聖凛流。
普段の外出も徒歩やバス・地下鉄などを利用するので、あんな車黒塗りの明らかな外車の高級車には、滅多にのらない。
だが、それを見て玲稀たちの顔の表情がいっきに変わる。
「・・・・・・、ね、ねぇ、あれ、雪ちゃんの家・・・?」
「・・・んな訳ないと、思うけど、だってロールスロイス・・・、」
「じゃ、俺かなー」
椋の声。
しかし、それに突っ込むのは雪。
「そりゃなーぃだろ?」
「ひでー・・・ってか、じゃ、・・・・・・、やっぱー」
雪・梓・椋の視線がある一定の人物に向けられた。
その人物は勿論自分達の大将であり、自分達とは比べ物にならないくらいの家柄の娘だ。
「・・・まさか、」
その視線に玲稀の表情がこわばった。
「今更何のようだってんだ・・・」と拳を堅くしながら呟く。
「?お前ら自分の家の車もわかんないのか?」
純利の素朴な疑問。
いくら金持ちつったって、自分の家の車くらいすぐに分かりそうなものだ。
例え、乗るならないは置いといて車庫をのぞいた時に見えるとかがあるだろう。
すると、あっさりと返事は返ってきた。
「や。興味ないし」
「ってーか、家にはー、かれこれ2、3年かえってなーいねー」
「右に同じ」
「こういう子たちです」
椋・雪・玲稀・梓の順番でなんとも分かりやすい返事をくれた。
その返事に聖凛はもう吃驚することよりも呆れることの方が多いらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・、ってか2、3年って」
「そんなんどうでもいいだー…って出て来てきたぞ」
純利の声で全員車のほうを向く、出てきたのはいかにも的なグラさんとスーツの男。
その男の姿を見て、まだ名前を呼ばれたわけでもないのに、玲稀たちの声がかぶる。
「「「いってらっしゃい、椋(ちゃん)」」」
「ぇ・・・」
拍子抜けした椋の声。
先ほど、あっさりお前じゃないのは確かだといったくせにあの男の姿格好を見た瞬間に俺かよ。と椋が内心呟く。
しかし、事実確かにあの男はうちにいる天龍組の幹部を勤めている男だ。
そう思い出し椋は男に近づいていく。
「何、あの赤毛の家だったん?結局」
「あずん家はあんな物騒なかっこうしてなーい、しかも夜になんてグラサンかけなーい」
「ってか大体私の所くるわけねーし」
玲稀の言葉に雪が同意しならが口を開いた。
「たーしかにー。ってかさ、アイツん家何気に裏資産合わせたら軽ーくうちや梓ん家こすんだろーかナ?」
「こら、裏資産とかこういう公の場で言わないの」
「はっはー、でもお金ーいーよねー…、」
「何ほのぼのしてんだよ、というかどんなに裏資産があってもお前の実家には適わねーんじゃねぇか?」
雪の言葉に玲稀は冷静にそう答えた。
いくら椋の家がやくざやなんだろうが、雪の実家はそれ以上の裏資産がありそうだ。と考えたからだ。
「はっははー、そいやー純利、って名前いーよナ」
「は?」
そういえば、と言いながら雪が出した一言。純利が答える。
初めて言われた言葉だ。
珍しい名前だとは言われ続けてきたが、褒められたことはない。自分の名前を褒められて嫌な気分になる人物も滅多にいない。
しかし、次に出た雪の言葉で純利は青筋を浮かべる。
「純利益・・・ってかんじで、さぁ・・・」
「悪いな、こいつバカだから」
そんな玲稀の声と共に雪の後頭部に綺麗に玲稀のパンチが入った。
「って・・・」と本当に痛いのか痛くないのか分からない表情で雪が言う。
「雪ちゃんが悪いー」
「すみませんでした」
梓にもう一押しされて言われたら謝らないわけにはいかない。
そして、冗談半分で口を開く。
「マ。どんな裏資産だってれーき様のお家には適いませんよーねッ」
「・・・・・・、っせぇ・・・・」
「あらららら?機嫌悪くした?」
明らかに実家の事に触れられた瞬間に玲稀の機嫌が悪くなる。雪は面白そうにからかう。
そんな会話の中で準は気付いてた。家の話をされた時と、さっきの言葉。
「・・・、わかんなくっていーんだよ、お前みたいなの、は」といわれた時の玲稀の顔の表情が…、どこか似てたことを・・・。
一方、椋は男に近づくと口を開く。
「何?」
「龍蔵様よりお迎えにあがるように、といわれました」
男の返答に軽く目を見開いた椋。
龍蔵とは自分を育ててくれてる祖父の事。いつもじゃありえない行動に椋が尋ねる。
「・・・じーさん、が?どういう風の吹き回り、だ・・・?」
「詳しくはきいておりませんが、龍蔵様、が」
「それしかいえねーのかぃ・・・、まぁ、仕方ねーか、せっかくだしのってこー。荷物もってくるわブランコに置いてあっから」
「かしこまりました」
そいうって椋は方向転換して、玲稀たちのところへやってくる。
帰ってきた椋に雪が尋ねた。
「やっぱ、お前ん家?」
「そうそう、何か今日はVIP待遇らしーぜー」
「梓も雄一くん迎えにきてくれる、ってー」
「電話触ってたのそれでかよ」
先ほどから梓が携帯をいじっていたのは迎えの車の手配。適当に男をよんで送ってもらおうと言う考えだった。
いつものペースの梓だが1つ疑問に思ってることがあり椋にたずねた。
「うん、椋ちゃん、さ…、あの人何かいってなかった?」
梓が軽く迎えにきた男に指を刺しながら椋に聞く。
「なんか、じーさんが迎えにいけつったって、どういう風の吹きまわりだか」
「バカ、吹き回し、だっつの」
「シリアスな場面をいつもいつもぶっ壊しやがって」と、呟く玲稀に、はははと笑いながら椋は「ぇ、そなの?」と聞き返している。
「莫迦」と玲稀は椋にむかって言うと暫く黙って椋につげた。
「はぁ、・・・とりあえず気をつけろよ」
「?何が?」
「・・・もういいよ、お前」
自分の周りに不可解な行動をとる者がいたら絶対に気を許してはいけない。
そういう意味を込めていったのに話を理解していなかった椋に溜息混じりに玲稀が言う。
「んー、じゃーなー。お前らー。っつーか今日試合どっちが勝ったことになるんだ?」
「そりゃ明日だろ」
生徒会朧月夜の試合の勝者校がきわどい時には後日どちらかの学園に各校の生徒会が集まり本部からの情報を聞く。
そして、その情報に従って勝者校が発表されるのだった。
「ぁー。そっか。んじゃーなー、また明日、学校で、聖凛サイドもなー」
「あぁー」
そいうって、駆け足で車に入っていく椋。
その後姿を見ながら雪が呟く。
「ったく、酷なことすんじゃねーの、おじー様は」
「・・・?どういう事だ?」
雪の声に健がくいついた。
「あいつ、明日学校くると、いーんだが、な・・・」
「マ、やくざの考えることはよーわかんらんよ、私は」
健の言葉などまるで無視も同然。そんな中で、梓も口を開いた。
「ぁー。雄一君ついたってー、すぐ近く」
「じゃ明日ーナ」
「椋ちゃんには試しにメールしてみてねー」
「お前しろよ面倒」
「男の子といる時に携帯触られるのは男の子が1番嫌いな行動なんだよ」
「さすがですねー、梓様」
「じゃーね。2人ともちゃんと仲良く帰るんだよ?一緒のマンションなんだから」
「へいへい」
「ほーい」
「・・・・、ま、いっかー・・・」
梓も夜の闇へと消えていく。
そんな、梓の後姿が見えなくなったくらいに、純利が口を開いた。
「明日、そっちの学校へうかがう」
「あぁ、」
その純利の言葉に続いて健が口を開く。
「なーんか、今日のゲームは拍子抜けだな。面白味も何もなかった」
「まー。私たちがさっさと殺っちゃったからねー?」
「そういう事だから今度からは気をつけてね」
その場にいる個々で一言ずつ。
何気ない会話の中に何故、ここまで物騒な言動が多いんだろうか。
そして、拓が玲稀に話しかける。
「ちょっと煙草貸してくれない?」
「・・・・・・・・・・・・・は・・・?」
「煙草、セブンスターでしょ?成宮さんはもうきれちゃってたみたいだから」
拓の言葉に玲稀は目を見開く。
「・・・生徒会長とめないん?」
「お前こそ生徒会長の癖に吸うのかよ」
「・・・まぁ・・・、」
そう言いながらポケットから煙草を出し軽く叩いて1本出す。
「ついでに火もね」
「そりゃ愚問だ」
煙草をくれといわれたら吸ってる人間だったら火も貸すのが当然の事。
ライターで火をつけると、拓は軽く微笑み、煙を吸い上げる。
ふー・・・っと吐くと、煙草の煙がわずかな街灯に照らされて空にのぼっていくのが見える。
すると、煙草を手にとり拓が口を開く。
「ありがとう」
「・・・あぁ・・・、」
「玲稀いこーぜー」
「あー、つっか、今日さむくねぇ?」
「あー、びみょーかもねー、4月にしたら寒いかもナ、ってか私にもセブンスタープリーズー」
「テメェいい加減買えよ」
「自販までの生命維持装置に何とか愛の手をー」
「くたばれ」
「うーわ・・・、ひで・・・」
そんなくだらない、会話をしながら夜の闇にとけていく2人のシルエットを見ている4人。
「何か、やりにくいんだよなー・・・」
「・・・気持ち分かるかも、しんねぇ、・・・そ、れ・・・」
「?準?珍しいね?君がそんな事」
「・・・・・・、でも、今回は負けたかもな・・・」
「「あー・・・」」
純利の声にそうかぶらる健と拓。
当然といえば当然だ。勝手に片付けられてしまったし自分達聖凛は何もしていない。
しかし、拓はすぐに口を開く。
「でも、後2回かてばいいからね?」
「・・・まーなー」
「それもそうだな」
「・・・・・・」
そんな会話をしていたら真っ先に入ってくるはずのボーイソプラノの声が入ってこない。
不審に思い全員が視線を下に向けると、闇に解けていったシルエットをずっとみつめる準。
「・・・まさか、なー・・・」
「準・・・、」
「!あ!あんだよ・・・!」
「惚れちゃってないよなー?じゅーんちゃんッ」
「!!ん!んな訳ねぇだろ・・・!!何であんなわけの分からん女に・・・!!」
「「「(あー。マジか・・・)」」」
準の返答に一瞬で準の心を読んだ3人。
「はぁ、・・・なんか、・・・・・・・・・面倒なことになりそう、だ・・・」
そんな純利の声も夜の闇にのみ込まれてしまった。
惚れた、なんかじゃない。
ただ、
ただ、
気になっただけだ・・・。
何であんな瞳をするのか、とか、
何でどこかさびしげなのか、・・・とか、が。
「・・・、おい、どこにつれていく気・・・」
「・・・すみません、椋嬢・・・、龍蔵様のご命令なんです」
「ッ!!!!!!!」
急にハンカチを押し当てられる。抵抗しようと自慢の蹴りをかまさせる。
しかし、視界が暗くなっていく。
時期に見えなくなるだろう。
あー、もう。なんで、こんな時に…、
何で、拳銃突きつけられたり、バカバカ言われたり、言いように使われてる、
アイツらの顔が、出て・・・、くん、だ・・・・・・、・・・・・・・。
「れ・・・き・・・」
ざわっ・・・、っと風が吹く。
それに何かきこえたきがして、振り返った。
「・・・・・・・、」
「・・・・・、玲稀?」
「今なんか、・・・」
「気のせいっしょ?」
「・・・なら、いいけど・・・。・・・」
そう呟きながら空を見上げると不可解なものが。
「気付いた?今日、月あかいーよねー、気持ち悪…ッ」
「・・・、あぁ、・・・」
「でも、マ。自然と、あのバカの頭にみえちゃうんだわ〜」
「ははっ・・・、確かにな」
そして、しばらくの沈黙のち、2人がいっせいに口を開く。
「「月だけどなぐりとばしてー」」
血を含んだ月というけれど、私はアイツの髪の毛はいいと思おう。
太陽みたいで、庭にたくさんさいてて、母さんが大切にしてた、真っ赤な薔薇みたいで。
NEXT
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真っ赤なつきって、人を食らった月のことらしいよ。