生徒会朧月夜 05
          (それは、たった一つの希望にかけた人生の光)







「れ・・・き・・・」





四葉ヶ丘女子学園
校門の前で立ち尽くす少年4人が…。


「ほえー、いつ見ても思うけどよ?」

「・・・、でっけー」

「流石だよね」

「あぁ・・・」


上から準・健・拓・純利。さすがな反応だ。
四葉ヶ丘女子といえば、全国の有数の企業の娘など・・・、
とりあえず、そんじゃそこらの学校とは次元の違う方々の来るところ。
学校の施設管理費や入学費…、ついでに言えば寄付金などが半端ないのだ。

そうして建てられた校舎は全校生徒500人に対し、施設は、図書館、運動施設は各別館にあり、校内に喫茶店やレストランもある。

学食じゃない。レストランなのだ。(重要らしい)

そして、本館には500人生徒に対し、クラスの数は30クラス。
PC室などの特殊学級もちゃんとあり、・・・1番上。つまり最上階にあるのが、『生徒会長室』

理事長室と並び、いわば学校で一番の権力者達の集まっているのが最上階の5階。

そのすぐ下に生徒会役員室と生徒会会議室がある。



「はー。金持ちの考えることっつーのはわかんねーなー」

「一応、僕達もそれなりに金持ち学校って言われてるのにね」


苦笑しながら言う拓に純利が言う。


「なんつーか、次元が違うんだろ」


純利の言葉の後に息を呑んだ準が恐る恐る口を開く。


「・・・はいるのか?」

「・・・、入るしか、ないんだ、ろ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「?みんな行かないの?なら、僕が先に行くよ?」


「「「何でテメェは平気なんだよッッッッ!!!!」」」





天龍組、地下室

拷問場のようなところ。血なまぐさい・・・、
一体、いままでここで何が行われてきたのかが、一気に悟れる。
そして、そこにいる、赤い髪の女、・・・、天宮椋しかいない。


「・・・、ちっ・・・、くしょ・・・!!」


腕を鎖で繋がれている。
何回も何回も取ろうとしてあがいたのだろう、錆びた鎖ですれた、手首からは血がにじみ、酷いことになっている。


「・・・ったく、どうがどうなったら俺が、んなめにあわされんだよ・・・っ」


はぁ。と溜息をつく椋。

そして、軽く呟く、


「今、何時だろ・・・、9時くらい・・・か?・・・あー・・・ぁ、学校、いきてー・・・なー・・・・」


何だかんだ言いつつ学校行かなきゃつまんねー・・・と呟いて椋は下を向く。





「椋と連絡がとれない?」


雪の声が静かな中庭に響く。


「うん・・・」


悲しそうに答えるのは梓。
昨日あの後、なんだかんだ言いつつ心配だったらしく梓は椋にメールしたが、返って来なかったと言う。


「?ただ気付かないだけじゃなーいの?基本アイツゲームっ子だーしさ?」


「ほら、いつもみてーに夜更かししすぎて寝てんだべ?」と付足しながら雪が言うと、梓は「でもー・・・」と言いながら答える。


「でも、ね?ずっと携帯鳴らしてたの・・・、最初はちゃんとかかったんだけど、今じゃー・・・、」

「?」


梓の言葉に疑問符を浮かべた。しかし、次の言葉でその疑問符は一気に消え去る。


「電源がきられてる、・・・って・・・」

「・・・、きられてる、ねー・・・、あのバカ・・・」


雪の声が低くなった。いつものように軽い声でなく、重く、低い真剣な声。
梓はその雪の珍しく真剣な態度に事の重大さを改めて実感したらしい。悲しそうに眉を下げる梓の頭をなぜながら言う。


「大丈夫だ、玲稀に相談して赤鬼退治にでもいこうじゃなーいの?ネ。あず」


いつもの声に戻ってそういわれたら、梓も何時ものペースに無理矢理でも戻すしかない。
ニッコリ、と笑って言う。


「・・・、う、・・・ん・・・、そうだよねっ!!あの頭ぶち抜いてやろうね・・・!!!」

「・・・・・・・・そこまでは、言ってないけーどな」

「へへへ…」


そう笑う梓に、雪が「いや、褒めてねーし、照れんなや」と小さく呟こうとしたが梓があまりにも笑顔で怖いので胸の中にしまうこととした。
「さーて・・・、どうするか。」
雪が心の中で呟いた瞬間に、後方から聞き覚えのある声が…。


「ぁ・・・、お前らっ・・・!!」

「はー?」
「へ?」


そんな声に振り向くと、昨日の対戦相手の男達4人の姿が。


「あぁ、そーいや玲稀にむかえにいけって昨日いわれたっけ?」


確かに雪は先ほど玲稀からメールが来た。
内容は『15分後に聖凛が来る、校門で待っててやれ』という【。】も【絵文字】もない短文で、
雪は「うわー・・・」と呟きながらも大人しく従っておくことにしたらしい。しかし、急にの梓の言葉ですっかり忘れてた。


「ぇー?そうだったの?ごめんね、私がくだらないことで足止めしちゃって」

「気にすんなってー。んでー?結果、聞きに来たんでしょー?」


結果と言うのは勿論、昨晩の試合の結果の事。
雪の質問に純利が答える。


「あぁ、・・・それよりいつみても凄いな。ここの校舎は」

「お前らん所もたいしてかわんないんじゃねーんかぃー?」

「次元がちがうっつの、」

まァね

「・・・、何かそうもはっきり言われると、・・・」


さらりと半分僻み、半分本心の意見を肯定された事に健が軽く青筋をたてたが、ソレをさえぎるように準がたずねる。


「・・・、なぁ・・・っ」

「あ?どしたよ?」

「・・・、昨日の女・・・、は?」


女、と聞かれて雪が返す。


「女ー?椋?椋なら音信普通なんだよー、きっとバカだから何かに捕まってー…」


雪の軽い問題発言に対し、拓が「違うよ、」とさえぎった。
その遮りに、「あ?んじゃあ、誰だよ」と雪が返すと、クスッ・・・っと意味深に笑って拓が答える。


「早瀬さんのこと、でしょ?準?」


その拓の言葉に顔を下に向けながら言う準。


「・・・、ま、まぁ・・・」

「れーちゃん???」


想定外の返答に雪と梓が顔を見合す。
それに、健が答えた。


「こいつ惚れちまったみてーなんだわー」


その健の言葉に梓と雪の言葉が綺麗にかぶる。


「「は?!趣味悪っ!!!!!!」」

「お前らそういうところはかぶるんだな」

「っつーか!!!!ちげぇよ!!ただ一緒じゃねーのか…って…!!!!」

「そういうのって惚れてるっていうんだよ?」

「うっせぇ!拓…!!!」


顔を赤くして必死に否定する準に梓がクス…と笑いながら答えた。


「ははっ、かわいい反応だなー…。でもね、・・・」


その瞬間梓の顔は真剣なものとなり続ける。


「れいちゃんはやめときな・・・」

「・・・?え?」

「どーいう事だよ?」


梓の発言に、健が聞き返す。
仲間の恋路を邪魔されるのはきにくわなかったのか、それとも玲稀がただタイプだからか。

そんな事はどうでもいい。

すると、今度は煙草を出し火をつけながら雪が答えた。


「アイツが背負ってるもんと持ってるもんは、到底うちらにゃー、どうする事の出来るもんでもねーの」

「?は?」


理解の出来ない言葉に健が返した。
その言葉に雪が笑いながら返す。


「マーァ、玲稀だけは相手にするだけ無駄よー、だってアイツ、おー・・・・っ、じゃなくって、お前らが傷付くだーけね」


雪の答えに納得いかない。
と言った表情の健だったが、それ以上に準の表情の方がはるかに可哀相だ。


「・・・、そ、そんなさ?しゅんとすんなって・・・!なぁ?純利?」

「・・・、まぁな」

「おまえは・・・っ!もうちょい気のきいた言葉っつーもんを」


そんな健の言葉を軽く受け流して、純利は雪と梓に聞いた。


「それで?俺らはどこへ行けばいいんだ?」

「あー…っと、とりあえず会長室でいーんじゃん?」

「案内お願いできるかな?」


雪の返答に拓が言う。


「OKー。さっさと終わらせようねー、面倒臭いから」

「じゃー、しゅっぱーつーっ」


かわいらしい梓の声が響く。


「お前ら学校じゃいつも一緒って訳じゃねーんだな?」


そんな健の素朴な疑問。


「は?」

「俺らは学校とかでもほとんど一緒だぜ?な?」


ナ?と拓たちに聴いた瞬間拓が「あー・・・」と言いながら言う。


「あ、それ思ってたんだけどさ?健だけ別クラスなのになんでうちのクラスにくるの?」

「?!まさかのお前うざいんだよ発言?!

「拓、突き放してやんな」

「健きてもいーじゃん、楽しーし・・・」


本当に仲がいいんだなと思わせる4人の会話に雪が「うわ、うぜ」と軽く心で呟きながら口を開く。


「・・・基本的に私らはそーだけどー・・・、ナ?」

「私ら?」


その答えには「私ら」ではなく「私等」と入ってなければならないはずだ。そこに疑問を抱きながら健が聞き返すと、梓が口を開く。


「あずと椋ちゃんと雪ちゃんっ!」

「あ?会長様は?」


健の疑問に雪が暫く顔を顰めてから答える。


「・・・アイツはあれだ・・・、基本的に生徒会長室にこもりっきりだ、テストの日以外は」


「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」





生徒会長室

会長室の印象。
ここが本当に高校生の生徒の部屋か・・・、そんな事を思わせるようなつくりだ。
ソファーやベットまで、ありキッチンのようなものまでついている。ソファーをはじめ家具たちは世界のセレブたちご用達の高級品。

あぁ、ある所にはあるんだね。お金って。そんな事は、ここにきたらすぐ思うこと。

・・・そして、そのベットに寝転がっているのが玲稀。

―――、
扉の開く音。
そして、それに何の躊躇い(ためらい)やオドオドさも無く、入ってくるまだ22,3だと思われる男。


「・・・何用だ」


男の顔を見るわけでもなく、瞳も閉じたままで玲稀は言い放つ。


「いや、どうかな、と思ってね。最近の朧月夜(ゲーム)は」


男の言葉に玲稀は即答する。


「変わりはない、出て行け」


相変わらずな生徒の態度に苦笑交じりに言い放った。


「酷いじゃないか?かりにも、【理事長先生】・・・に」


理事長先生。
その男は、確かにコノ大規模な敷地を誇る【四葉ヶ丘女子】の理事長兼校長だった。
名前は、『東條 謙吾』25歳。

しかし、24歳で父からこの学校をもらいうけた、かなりの曲者。


「んじゃ、理事長様?いかがしましたか?」

「ひっどいなー、本当に、玲稀は」

「名前、・・・勝手によんでんじゃねぇよ・・・」

「だって、僕理事長だしさー」

「・・・・・・・・、で?何のようだ」


いつもどおりのこの男のペースに飲まれないように、玲稀は再度問う。
それに、東條はニコニコした表情1つ崩さずに、答える。


「んー、昨日。大変だったんだって?」

「誰から聞いた・・・、」

「だって、僕基本的になんでも出来るし」


はははー、と笑いながら恐ろしいことを言い放った男に玲稀は溜息混じりに言う。
そして、やっと瞳を開いた。


「・・・さらりというな、ったく・・・、それで?朧月夜(おぼろつきよ)なら変わりはねぇ・・・」

「大変って言うのは、朧月夜のことじゃなくて・・・」


そう言いながらベットに寝転がっている玲稀の所へ近づいてくる。


「・・・、天宮のことだよ」

「・・・?椋・・・?」


とういう事だ?と言いたげな顔で、寝転がったまま見上げる。


「?もしかして、気付かなかった?」

「・・・、麻薬取引してた奴等達のことか?」


玲稀が言うと「流石ー」と言いながら東條が答える。


「なんだ、やっぱ気付いてたんじゃない、天宮の家だったでしょ?」

「そりゃ・・・、ただ、何故ソレをお前が知ってるんだよ」

「さぁ?何でだろうね」


不満の残る回答に軽く眉をしかめる玲稀。


「結局何を言いに来たんだ。お前は」


玲稀が問うと、やっと言いに来た事の本題に入った東條。


「先生方から苦情が殺到でね?早瀬玲稀は授業へ参加しないで生徒会長室にこもってばかりだ。と」

「は?」


何だ。そんなことか。今更、そんなことが言いたげな玲稀の表情に東條は表情をかえずに玲稀の顔に手を伸ばす。


「・・・」

「だから、説教しにきたんだ、理事長としてね」


パシッ…、


乾いた音が会長室に響く。玲稀が手を振り払ったらしい。


「あれ?怒った?」

「当然だろ、何のつもりだ」

「やー、何となくね〜?」

「・・・欲求不満はらしたいならそこらの女子生徒でやれ、私は拒否」

「そこまで、女の子にも困ってないんだけどね?」

「んじゃー出」


出て行け。
玲稀がそう言おうとした瞬間に東條の顔が近づいてくる。


おい、そこ。


そんな突込みがはいりそうな瞬間。生徒会室の扉が開かれる。


「れーいちゃーーん、聖凛の方々がーーー…、」


「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」




入ってきて瞬間、目に入ってきた光景。

ベットに座り込んでいる女(生徒会長)
その女の頬に手をあてて迫っている男。(しかも若くて何気にイケメン)

聖凛サイドが一気に静まり返る。


「・・・、えっと、・・・」

その光景にとりあえずこういうのには慣れている、女遊びの激しい健が「お邪魔しました?」と尋ねる。
しかし、雪と梓が溜息をつきながら口を開いた。


「ったくー、理事長先生ー、いい加減にしてください・・・!玲稀ちゃんをからかうのっ!!!!」

「ははは、おはよー、野村・成宮」


梓の声に笑顔で答えながら言う東條。
雪が玲稀を見ながら言う。


「かいちょー、何?事前?事後?」

「んな訳あっか、バカ」

「そうそう、未遂だよ

「それもちげぇ」

「まぁまぁ、続きは今度ね」

「今度なんかあっかよ、いい加減にしろ」

「で?・・・、あぁ、後ろの奴ら、中入れろ」


やっと、聖凛の存在に気付いたらしい玲稀は、ソファーを指差して不機嫌を隠せずに言う。
それに対し、逆らわない方が今はいい。と判断した雪と梓は聖凛の4人に声をかける。


「どうぞー、」

「いやー、醜いもんみせちゃったねー」

「成宮ちゃんそれどういう意味かな?」


そんな会話に純利がはさみ東條に尋ねる。


「あ、の・・・、理事長先生です、か?」

「?あぁ、申し送れました、理事長の東條です」


東條の言葉に聖凛サイドは当然の反応を見せた。


「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

「・・・玲稀、この子達の反応はあれかな?僕にけんか売ってるのかな?」


にこっと爽やかに玲稀に聞く東條。
それに玲稀はさらりと答える。


「いい反応じゃあねぁか・・・、というか、客人だ・・・、丁重に迎えろ」

「って言われても男だしね〜」

「テメェは・・・」


いい加減うざくなって来たらしく玲稀の声が広い生徒会長室に響く。
その時、「あぁ・・・、そういえば、」と、拓が口を開いた。


「申し送れました、聖凛の会計の宮坂拓。です。よろしくお願いします」

「これは、これはご丁寧にありがとう」


にこっ。っと言う2人の会話は、なぜだか、・・・、悪寒を感じるのであった。
それに続いて健・純利も挨拶をする。
そして、最後・・・、


「・・・・・・、」

「?準?どうした?」

「・・・、い、いや、別、に・・・、城条、準、・・・で、す・・・」

「?どうしたの?具合悪いのかい?」


「「「「「テメェのせいだろ!!!!」」」」」


明らかに玲稀と東條のあんな姿を見たからに決まっている。
つい、同情した雪と梓までもが聖凛サイドと共につっこんでしまった。
急にそんな大人数でつっこまれ、?マークをうかべている東條。そんな中、玲稀があることに気付く。


「おい、あのバカどこにいる?」

「ぁ?バカー?」

「バカなんて椋しかいねーだろ」


・・・
・・・
・・・
・・・


「「っあー…、」」


雪と梓のヤバッ…、という感じの声が響く。
どうやら、すっかり忘れていたらしい。

玲稀はまた、「どいつもこいつも莫迦ばっかか・・・」と呟きベットから降りて軽く東條に後ろから蹴りをかます。


「!いたっ!教師殴っていいとでも」

「っせぇ、邪魔だ。つか蹴ったんだ。んで?椋は」

「・・・?どういう事だ?椋ってあの赤髪だろ?」

「うっせぇ、オレンジ」

「オレンジじゃねぇ!!朝倉健だ・・・!!!」


話の内容に疑問を抱いた健がいち早く尋ねる。
しかし、今の玲稀の不機嫌さはMAX…適当にあしらわれた。
訂正しろっ!と言った感じで、健が叫んだがそんなの四葉サイドの秀才3人は聞く訳もなく。


「んー、何かね?メールしてもかえってこないし電話しても、電源がきれてる、って、さ・・・」

「?返信がない・・・?・・・」

「あー、やっぱ昨日とめりゃーよかったかーね?」


「したらこんな面倒なことにならないですんだカモカモ〜」という雪に玲稀が「あー・・・」と言いながら答える。

「しっらね、面倒くせぇなぁ・・・、おい、東條」

「うわ、呼び捨て?!」


仮にも理事長なのに生徒に呼び捨てされたことにつっこん東條だったが今の玲稀はまるで無視同然。
さらり、と流されて玲稀から次に発せられる言葉に、生徒会長室へきた本当の本題を話させられる羽目になる。


「おい、東條、テメェ椋のこと教えにきたんだろ、さっさと吐きやがれ」

「―・・・さすがだね、玲稀は」


ふぅ。と息をついてソファーに腰を下ろす東條。
煙草の吸殻がぎっしりつまった灰皿を見つめながら軽く微笑する。
その時、純利が口をわってはいった。


「何がどうなったかは知りませんが、我々は昨日の朧月夜の結果を聞きにきたんです、そちらの事情は後にしていただきたいのですが?」

「おい、純利・・・っ!」

「こういうとき純利って決行冷酷だよね、さらりと」

「・・・・・っでも!純利こいつら困ってんだろ・・・?!だったら」

「困ってても困ってなくっても俺らには関係ないだろ、さっさと昨日の結果を教えていただきたいです」

「あー、でも俺ら負け決定じゃねの?」

「健、ちょっとだまってようね」


聖凛サイドの反応に、へー。と目を丸くする、雪。
そして、口をひらく。


「おもしれー、純利益からそんな言葉がきけんなんってな?」

純利だ

「似たようなもんジャン」

「全然にてない」

「ははっはー。まーぁ。東條さっさと結果、おしえろや」

「・・・えー」

「テメェ、殺すぞ・・・」


玲稀の声が流石に怒り頂点の声になった。
流石にやばいと思ったのか速攻で口を開く。


「天宮なら自宅の地下室だよ」

「・・・?地下室・・・っ?」


玲稀が聞き返す。
地下室ってあたりが平和じゃないだろう。


「天龍組は代々の麻薬取引の常習犯だからね、それを邪魔したんだ、許されるわけがない」


東條の言葉で全員が言葉に詰まったように思われた。しかし、玲稀が口を開いた。


「・・・・、ってか・・・」

「「「何でお前そんな事しってんだよ(のよ)(のーさ?)」」」

「・・・、ほら僕は何でもしってるんだって」

「・・・訳わかんね・・・、」

「・・・てか地下室?!」


健の叫び声が響いた。


「は?監禁されてる、ってことかよ?!しかも、自分の家にか!?」

「・・・元々、椋のご両親は亡くなっている。唯一の身寄りの祖父の天宮に引き取られてが諒はそこでも裏では、邪魔者扱いされ続けたんだ、」

「・・・?そこで、も?」


そこでも。その言葉に、疑問を抱いた拓が聞き返す。
その言葉に玲稀が言う。


「・・・、椋は、高1のときにご両親をなくした。それも自殺という結果でな。その自殺の背景には、・・・椋への、虐待があった」

「「「「虐待・・・?」」」」」





暗いところが嫌いだ。
太陽がないところは嫌いだ。
月が嫌いだ。

暗い暗い闇はいつも私の何かを隠してくれていた。
けど、いつ一体になってもおかしくなくって、いつしか、怖くなった。
太陽がないところは酷く寒くって、
太陽がない空はとても寂しそうで、
・・・・・、暗くって。

月明かりに照らされたら、自分が惨めになる。
何で、父さんと母さんを助けられなかったのか。
何で、か・・・。と。

とても、とても、怖くって、寂しくって、寒くって、・・・・惨めで、自分の生きている意味も分からなくなる。





「あーぁ・・・、腹減った・・・」





人はなぜ、生まれてくるのか。
人はなぜ、死ぬのか。
人はなぜ、悲しみを知るのか、

人はなんて、孤独なのか。








NEXT
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私が背負うのは罪と罰