生徒会朧月夜 06
          (それは、私の唯一の希望)







ガタッ…、

地下室の鍵が開く音。
誰だ…。何時間ぶりかの光があけられた扉から暗い漆黒の世界に注がれた。


「・・・気分はどうだ?」

「・・・・・・っ、クソ爺・・・、が・・・っ」


私の大嫌いな人物。でも、大好きな人物。

私はこいつの不適な笑い方に・・・、そう、こんな笑い方だっ、・・・それに、愛情を錯覚してしまう。
父さんと母さんからもらえなかった愛情を・・・、唯一の血のつながりの、この人に知らず知らずの内に求めている。

そんな自分さえも許せなくって・・・。


「相変わらず私の事をゴキブリを見るような目でみるんだな・・・、お前は」

「・・・そーかよ、わりぃな、無意識だ・・・こりゃ重症だぜ・・・」

「・・・、そう強がって入られるのも今のうちだ・・・、」


そう言って何か煙草のようなものに火をつけ、灰皿みたいなところへそれを置く。
煙草・・・、いや、煙草にしたら太い。

葉巻のような、・・・、
まだ、目が慣れてないらしく見えない。

さっきまであんなに求めてた光が一瞬邪魔にさえ感じる。


「・・・、んだ、そ、りゃ、行っとくけど俺はスポーツマンだから煙草も葉巻もしねーぞ・・・」

「そうか?一部のオリンピック選手も愛用しているぞ」

「・・・、煙草、を・・・」

「・・・、違うな、煙草じゃない列記とした、 クサ さ」

「・・・っ!!」


じじいの言葉に目を見開く。
それって、まさか、・・・大麻かよ。






「「「「・・・・・虐・・・たい・・・?」」」」」


聖凛サイドの声がかぶる。は?といった感じだろうか。
それに続き、健が口を開いた。


「虐待・・・つったって、あの女が黙って殴られてる性質かよ?見てても理解でっきけどよ?」

「・・・、マ、そこらへんは色々あるんだよー、ネ。雪ちゃん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「?雪、ちゃん?」


ぼーっとしている雪に再度梓が聞き返す。
すると、雪が急に立ち上がった。


「!・・・、や、何で、も・・・、ってか玲稀さー?どーする気ー?」

「どーする、つったってバカあのままにしとく訳にゃー、いかねぇだろ」

「たーしかに、面倒だけどさー」

「大麻かがされて薬中にでもされたらもっと面倒だ、さっさと行くぞ」

「!ぇ、じゃ、助けにいくのかよ・・・?!」


ちょっと見直したぜ・・・、的な健の言動に玲稀と梓・雪がさらりと返した


「はー?何それ、ネター?」

「ぇ?」

「助けに行くー・・・?面白いギャグだねー」

「は?」

「ちょっと教育しにいくんだよ」

「へ?」



「「「バカな子はちゃんと教育しなきゃいけない(っしょ?)(んじゃなーい?)(んだよ?)」」」


「「「「うわー・・・」」」」






「で?何でお前らまでついてきた訳?」


玲稀の一言。それに純利が答えた。


「俺がしるか・・・、健と拓がどうしてもっつーから、」


主に拓の一言で聖凛も一緒に行くことが決まった。聖凛では拓が最強なのだ。
その返答に玲稀はあきれながら答える。


「それも、そう、か・・・・・・・・・、つーか、お前らなー・・・」


「っしゃー、大富豪ーー」
「!また成宮かよ・・・!!」
「さっきから連続で3回全部お前じゃねーの・・・!?」
「雪ちゃん調子のりすぎ」
「ははー…、そろそろ本気でいこうかー」
「ぇ、いや、あの、梓?どさくさにまぎれてなんか怖い事言わんかったーーー・・・?」
「まさか、全然」


「ピクニックじゃねーんだっつーの!!!」

「確かに、同感・・・」

「だって、つまんねーじゃんー、面倒くっせー」

「雪ちゃん!今から椋ちゃん教育しにいくんだよっ???」

「はは、それ楽しみ」

「・・・・、お前らナ・・・」


玲稀が頭をかかえながら呟く。
すると、さっきからずっと感じでいた視線に気付く。


「・・・、何、・・・、お前」

「!ぇ!!・・・、い、いや、べ、別に・・・っ!!」


その、準の反応に大貧民で盛り上がってた玲稀・準以外の奴らがつっこむ。


『うっわ、初々しい・・・!』

「うるせぇ・・・!!」

「は?何なんだ・・・」

「や、お前もそろそろ気付いてやれよ」


雪の突込みがもろに玲稀に入った。
しかし、当の玲稀は、「あ?何がだよ、訳わかんねぇ・・・」等と呟いている。


「なんつーかさ、お前罪な女だよな」

「別に天然な訳じゃないのにね、興味ないんだね。本当に」


梓と雪が玲稀にそう言うと拓が今度は雪と梓に尋ねた。


「成宮さんと野村さんはどうなの?彼氏とか」


その質問をした瞬間明らかに雪の表情が曇った。
それに気付いたのはその場にいた全員。


「あずはね、特定の男の子はいないよ」

「って事は女版の健だね」

「だって、あずみたいにかわいい人間が誰か1人だけの物になったら他の男の子達に失礼でしょー?」

「梓、もういいからお前黙れ、うざいからその会話」

「むー、何でー?玲稀ちゃん?」

「ん、黙れ」


そして、拓が今度は雪に尋ねる。
表情が曇ったのは明らかに分かった。

しかし、ここは好奇心。

表情が曇り車の窓から空をみあげている雪に尋ねる。


「で?成宮さんは?」


「あぁ、こいつ絶対にSだ・・・」そう、思ったのは玲稀だけではないだろう。
サドって言うよりも性格が真剣に悪いのかもしれない。

しばらくの沈黙。

5秒位だろうか。凄い長く感じる。沈黙を破ったのは雪本人。


「・・・、きょーみ、ない」

「そうなんだ、残念だね、かわいいのに」

「それ、よく言われるわー」


車は赤信号の交差点に差し掛かった。
ここの信号は長いって有名だ。

あのバカの所まではまだしばらくかかりそうだ。






確か、いつだか玲稀が言ってったっけな・・・。

『覚醒剤の副作用は、急性中毒により常同行為、興奮、不眠、食欲不振みてぇな精神症状や、血圧上昇、散瞳など交感神経刺激症状が出現。だから大抵の覚醒剤所持者ってのは瞳孔がひらいてんだ、そして、これが最終的な部分だ、・・勿論、死亡することもある・・・、』

「ごっほごほ・・・、・・・っ!畜生・・・!死んでたまっか、よ・・・!」


クサの匂い・・・。
薬物中にして私にどうしてほしいのか。

あぁ・・・、どうしろってんだ。本当に・・・。畜生・・・、私らしくねー、

でも、体中いてーし、手首しばられてるし・・・、
うごけねーし・・・、くれーし1人ぼっちだし・・・。


あー、でも、何か、何か。
もう、どーでもいーかも・・・。
真っ暗な中で希望を捨てようと思った。

そーいえば、前も、いつだかもこんなことがあった。

いつだっけ、確か、あれは・・・、






ぱしっ・・・!!!

聞き覚えのある小さめの銃声。玲稀の改造エアガンじゃん。
梓が違法だけど、つって、作ってやったんだっけ、確か。

あー、幻覚ならぬ幻聴作用かよー・・・。
死ぬのかよ、私。あー、ゲーム最後までしてねーし、父さんと母さんと達也の写真に線香あげてねー・・・、
でも、一緒の所いくなら別にいーか・・・、その瞬間だった。

がたっ・・っと、ドラマみてーにドアが倒れる。
そして、


「えらく趣味のいー部屋があんじゃなーいの。お前の家」

「本当だー、今度からここで椋ちゃんのお仕置が出来るねー」

「じゃ、初の拷問部屋でのお仕置実行日は今日で意義は」

「「なし」」

「・・・、お前ら・・・っ」

「っつーか、何この匂い」

「大麻でしょ?」

「そーか、そーかー、大麻かー・・・・・・・、大麻!?!?!?!」

「あんま嗅がないほーが体にはおやさしー行為だよー」

「なんでお前らは平気なんだよ・・・?!」

「っつーか何でテメェらまでいんだよ?!聖凛?!」


椋の声が地下室に響く。
その声を聞いて玲稀が椋のぶち込まれている牢屋のまん前でしゃがみ込み言う。


「元気そーだな」

「・・・、ばか、や、ろー・・・」

「何泣きそうな顔してんだよ、バカ」

「泣いてねーよ・・・ただ、」

「・・・、ただ?」

「もぅ、会えねーかも、って思った、から・・・」

「バカじゃねぇの?」

「!即答すんなよ・・・!」

「・・・、んなもん、」


「生きてたらまた何度でもうぜー位に会っちまうじゃねーの?」


「―――ッ…、」


真っ暗な中で希望を捨てようと思った。
そーいえば、前も、いつだかもこんなことがあった。

いつだっけ、確か、あれは・・・、・・・・確か、

父さんと母さんが死んだ時だ。
でも、ここに私がいるのは、こいつ等に会えたからだ。


「椋、ちょっと頭下げろ」

「・・・?は」


ぱしっ…!


「ぎゃぁ!!!」


急に頭伏せろといわれ伏せようとしたら、そんな事も出来るような猶予もくれずに玲稀が銃口をこっちに向けてうった。・・・っ・・・、つい、目を瞑ってしまった。・・・、こ、こえぇ・・・っ。すると、しばらくしてある事に気付く。


ジャラ・・・、


「手取れてる」

「激しく誤解を招く言葉だな、お前、何なら本当にとるか・・・?」


チャキ・・・と銃口が今度は明らかに私の腕に向かって向けられる。


「うっわ!冗談冗談・・・!!死ぬ死ぬ・・・!!」

「大麻は、火つけてどんくらいだ?」

「あ?まだ、30分、くらい、じゃねーかな・・・」

「・・・・マ。多分大丈夫でしょ?ね、れーき?」

「・・・あぁ」

「何だよ?!その間?!」


かすかな隙間に軽く違和感を感じる。
何?!何かやばい?!汗を流しながら叫ぶと、外で見張りをしていたらしい聖凛サイドが叫ぶ。


「!誰かくるぞ・・・!」

「おじいさんだけど、どうする?」

「おじいさん?」

「!!!」


俺の反応を見て一気に玲稀は悟ったらしい。
すると、その瞬間玲稀はその場に座り込む。


「っしょ・・・っと、」


それに続いて雪、梓も。
・・・、こいつらのやることは時々私でも理解できない。


「!ぇ!何!?お前ら逃げると隠れるとかネー訳!?」

「はー。本当に、彼女達らしいね・・・」

「大体俺達は何で巻き込まれてるんだよ・・・」

「!だ!だってほっとけねーじゃん!!」

「お前は早瀬だけだろ」

「・・・、ち、ち・・・」

「「「(否定もしなくなった)」」」


座り込んだ玲稀・雪・梓の3人につづき拓も玲稀の隣をちょっとあけて座る。
すると、準に向かって玲稀の隣を指差して言う。


「準、こっち、こっち、ここおいで」

「・・・!・・・、う、うん・・・」


すると、チョコン・・・と準も座った。
はぁ・・・、と溜息をつきながら純利と健もそれに続く。

残されたのは未だ手足は自由になっても牢屋の中にいる椋だけ。
すると、玲稀が椋の方を見ながら口を開く。


「テメェの事だ、テメェでけりつけろ」

「ッ!な・・・!」


そう、言いながら違法エアガンで殺傷能力は十分にある自分の拳銃を椋にいる牢屋の中へ投げる。
そして、続ける。


「殺すなら殺せ。お前がそれでいいのなら、弾は後残り5つ。ここに来るまでにいくつか使っちまったからな、マ。とりあえず、好きに使え」

「――――ッ!!」

「何度もいわせんな、お前のことだ、私達がけりつけてやる義理も理由もない。・・・ただ、お前の生き方、興味あっから目に刻んでやるよ、好きにしろ」

「・・・・・」

「・・・・・」

「逃げるのも生き方だ・・・、ただ、逃げてもお前自身は何もかわんねーぞ」


そう、言いながらポケットから煙草を出す。
セブンスターの香りが火をつけた瞬間に当たりに広がった。
そして、一息ふいて、玲稀が最後の言葉を言う。


「お前の生きる道だ、お前の好きなようにしろ」


そうだ、私達はコイツのこの言葉に救われた。
コイツの話を聞いたら全てが馬鹿馬鹿しくなる。

何で私は悲劇のヒロインぶってるんだろう。とか、何で、こんな事で悩んでたんだろう。とか、

何で、こんな事にも気付かなかったのだろう。と。


「椋、「じーさん」


入ってきたじーさんの声とか瞳とかは何時もどおり冷たかった。
仕方ないじゃん。
もう、引き下がれねーし、引き下がりたくないし。


「・・・・」

「俺決めたわ」

「・・・、何をだ・・・、」





「決着つけよーぜ、全てに」


その言葉に、玲稀は笑ってた。
勿論、雪も梓も笑ってた。

喜んでるのか楽しんでるのかはわかんねーけど、決着をつけよう。





人は生まれてから死ぬまで自分の好きな道を選べばいい。
だって、それが、俺の一番尊敬している奴の視線が教えてくれたことだし。








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人は、孤独ナ生き物だ。 だからこそ、寂しがり屋で集団を作りたがる。