生徒会朧月夜 08
          (それは、大切なもの)






「・・・悪っかった」


頭をさげた。
郁とじいさんに。

今までの事全てを謝った。


「っいいのよ、私達こそ」

「つらい思いをさせたな」


ぐいぐいと郁に、頭を撫ぜられる。
あぁ、あったかい。この手。

母さんみたいであったかい。


「おいっ!椋っ!テメェの部屋テレビあんのか?!」

「あ、あるけど―」

「どこだよ!ほらっ!今最初の前話を振り返ってるところじゃんよっ!まだ間に合う!!」

「いい加減諦めたら?君達」

「うっせぇ!諦めねぇ!レイとヨウイチの遺産争いの結果!!」

「あぁ、昼メロってそのことなの?」

「っせぇ!大体テメェなんできてんだよっ!!!」


雪が胸倉をつかんで理事長につめよる。
しかし、理事長は爽やかな笑顔で「はっははー」と笑い蹴飛ばした。


「あぁ!私の昼メロ人生・・・!!」

「や。どんな人生よ、それ」


健の突っ込みが入った。
確かにあんなどろどろモンみて何が楽しんだっつの。


「遺産争いーっ!」

「とりあえずいこう!!!!梓知ってるよ椋ちゃんの部屋!」


「1回来たことあるんだ」と可愛く言い放つと雪と玲稀もソレを聞いて駆け足て上にのぼっていく。
そしてあの3人が出て行った地下室はしーんと静かになる。

「静かになったね」

「あぁ、ってか悪かったな、お前らにまで面倒かけた」

「気にすんなよ、巻き込まれるのは何かと慣れてる」

「そーかい、でも、マ。サンキューな」


一応世話になったので頭を下げた。
キャラじゃないので軽く恥ずかしい。スグに頭をあげると次に拓が口を開く。


「あの子達はとくに成宮さんと早瀬さん人を殺すことに動揺や罪悪感はないの?」

「罪悪感・・・な」


拓の質問に私は息を詰まらした。
言っていいものか。

・・・けど、こいつ等なら。

あってまだ短い間だけど、こいつ等なら言ってもいいかもしれない。
不意によぎるそんな思いについ口をあけてしまう。


「玲稀の事は、私も詳しくはしらない。けど、アイツも雪も昔から・・・殺らなきゃ殺られる立場にいたんだよ、」

「殺らなきゃ・・・殺、られる・・・?」

「あぁ、つかさ?玲稀に限っては何もいえないんだわ私もあんまり知らねぇし・・・、雪もようわからん・・・」

「結局何もわかってねぇじゃん、それ」

「っせぇ・・・、だからこっちだって、イラつくんじゃねぇか・・・」


眉をしかめる。
何故だか、すぐに感じ取ってくれた。こいつらは勘だけはほめてやる。

拓が口を開いた。


「ごめんね、変な思いさせちゃって」

「あぁ、わりぃなこっちこそ、役にたてなくって」


続けて今度は純利が口を開く。


「で?お前なりの決着はついたのか?」

「―――、わかんねぇ、けど、後悔はしねぇ結果になった」

「…そうか、」

「それでいんじゃねーの?」


純利の声をさえぎって、煙草を荒々しく取り出して火をつけながら健が言う。
すると、準までもが口を開く。


「そうそ、お前らしーよ、その方が」


にかっと女みたいに笑うと癒されるなコイツの笑顔は。
そして、私は呟く。


「生きてやるさ、このクソくらえな世の中、でな」


「あいつらと共に」





蝶の命は儚くも短い。

けど、そんな短い命の為に蝶があの強いサナギの皮を破るのは、生きるためなんだ。
蝶にも恥じない生き方をしたい。

人間はちょっと生きる長さが長すぎたから、自分達よりも短い命の動物・虫を莫迦にし、簡単に殺す。
簡単に殺された動物や虫のほうが、よっぽどかっこよく生きている。

最後までかっこよくありたい。最後まで、綺麗で、華やかで・・・そんな生き方、私は認めない。
汚くても良い。地面はいつくばっても、血まみれでも何でも良い。

恥じねぇように生きていくんだ。








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蝶でも、生きている。