生徒会朧月夜 12
          (それは、穏やかでないことは確かなふれあい)






忘れてた。
私には友達なんて生温いもん、作っちゃいけねぇんだ。

・・・いや、忘れてたわけじゃあない。

――、私が近づけば、そいつらがだめになる。


「―――――――、母様…私は―…どうすればいいですか…、」


写真をみて呟いた。
私はその方が大好きだった。
ソノ方のお姿を目にしているだけで、幸せだった。

私にとって、その方は絶対的存在で、神とも呼べる存在だった。






聖凛男子高等学校


「ハロー純利」

「とりあえず俺の机の上から退きやがれ」


視界に入ってきた見覚えのアル男にとりあえず冷静にそんな言葉を俺はかました。
アル男、とは勿論『宮坂拓』
一応いっておく、コイツは生徒会長じゃあない。生徒会長は、俺だ。(←コレ重要)

そして、俺は今、登校してきた。まず最初に俺のクラスへ向かった。
すると、俺の机の上に座っている男がいる。

その男はひょうひょうとハローなどと軽くハートマークも一緒に飛ばしながら告げてきた。


「えー。だって、純利の机ちょうどいんだもの高さ的に」

「んじゃあ、俺がお前の机の上に座ってたらどうする?」

「それはもう、血祭り騒ぎところじゃあないよね」

「―――・・・(んの自己中・・・)」


せめて、椅子に座っててほしかった。
いつも拓は俺の机に腰掛けて本を読んでいる。

全く迷惑な奴だ。

ちなみに俺の前がコイツの席。
絶対に裏で担任あたりを脅してそうさせた。


「あー、純利?」

「だから何だよ」

「おはよう」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「うわぁ…だまってカッターナイフ取り出さないでよー」


コイツのテンションはイロイロと癇に障ってムカつくことが多い。(言わないし、言えないが)
時々、積もったストレスは無意識の内に近くの凶器を手にさせるのだった。


「ねー、転校生だって、転校生」

「どうせ男だろ…」

「うわ、純利から意外な発言だね」

「否、女がいいとかじゃあなくて男なんだから別に珍しくもなんともねぇだろうっつー事だよ」

「えー、でもさっきクソジ…教頭先生に会った時にね、その転校生が生徒会入会を希望しているって言われたんだ」

「その前に教頭のことクソジジイって言おうとしやがらなかったか?お前」


とりあえず気になったので聞いてみると「まさかー?」とひょうひょうと返してくる。
その時の笑顔は俺に「つっこむんじゃあねぇよ」と問いかけてきていた気がしたのでつっこむのもやめた。

そして、不意と教室を見渡すとポツンと1番前の席で1人沈んでいる奴を見つける。
それは、紛れもない準だった。


「・・・?おい、拓」

「だからクソジジイなんていうわけないって言ってるの聞こえないのかよ?莫迦?みたいな感じなんだけ」

「そうじゃあねぇよ、ってかテメェよか頭いいしな」

「喧嘩うってるんだねぇ?」

「・・・・・・・・、準は、アレは何だ?」


爽やかに話を振られた。
やばい命にかかわる。そう判断した俺は準の話題をまく。


「あぁ・・・パーティーの事件からずっとあの調子」

「パーティー、・・・早瀬の件か?」


まだ記憶に新しいその姿。それ以前に早瀬の言葉が俺の中でまだ渦を巻くようにひっかかっていた。


「軽蔑するか?」
「それとも利用してやろうって気にでもなったか?」


そんな気持ちはさらさらない。
というか俺の親は代議士だし興味の欠片もない。(何気にムカつくな)

だけど、何かがひっかかっていた。
怒りとかじゃなくて、あの時の早瀬と成宮の会話が…、


「そう・・・、あ。ちなみに準の場合アレだよ、きっと早瀬さんと成宮さんが喧嘩したのじゃないよ」

「は?・・・じゃあなんだ?」

「早瀬さんのお兄さん達の言葉だよ、絶対に、ほら、僕と純利だったら家の仕事の関係で交際OK〜みたいなね、準は…病院だからさ」

「つってもアイツの家の病院もちゃんとした総合病院だし、都内でもかなりの上の方だろ?」

「でも早瀬は医療関係には興味ない・・・というか医療関係自体から退いてるじゃない、準が知らないわけないでしょ?」

「あー・・・」

「――、本当に好きなんだねー、早瀬さんの事」


そういいながら準をみる拓にむかって不意に俺は一言。


「お前だって、人の事、言えるのか?」

「―――、」


その言葉に一瞬目を見開いた拓だったがすぐに何時ものような笑顔に戻り、小さい声で返してきた。


「僕に恋愛しろとでも言う?」

「・・・・・・」




「はーい、おはようございます、今日は転校生がいます」


拓の返答を聴いた瞬間に先生がはいってきた。
そして、一緒に入ってきた転校生、とやらをみて拓と俺、準は一斉に立ちあがる。


「―――はじめまして、転校性の『中山洋』ちなみに生徒会入会希望です、よろしく」

『・・・・・・は?』






「先生…実はね…」

「パーティーでしょ?しってるよ、僕も行ってたから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(殺したい)」

「はははそんな目でみないでってー、ねぇ?梓?」


ニコニコと振舞う理事長に、私はこの前の事件の中で感じたことを恐らくしっているであろうこの男に聞く。


「ねぇ…理事長?」

「何だい?野村?」


私は意を決してずっと胸のどこかにつっかかってたことを口に出す。


「――玲稀ちゃんと雪ちゃんって…さ?昔、何があったの?」






「――――な」

「黙れ」

「…ハイ…」


さっきからずっとこの調子だ。
畜生、ちなみにさっき、俺の言葉を聞かずに振り切ったのは紛れもなくお金大好き少女の『成宮雪』

この前のパーティーは俺には最高に楽しいものだった。
からあげとかケーキとかむっさうまかったし。

けど、途中でやってきた玲稀の兄貴とか言う男たちのせいで雪と玲稀はケンカして、それからずっとこの調子。

玲稀は相変わらず…否、前以上に生徒会室にこもる様になって俺達との接触も滅多にない。

どうすりゃいんだよ、この状況はよぉ…。
梓は先ほどからのこの空気にあきれて逃走。俺もそうしようと思ったけど梓が。


「椋ちゃんはちゃんと、もし、玲稀ちゃんが来た時に2人がケンカしないように見ててあげてね」

とかハートつきで言うもんだから逃走もはかれない。
畜生ー…、余裕で体育館でバスケしてた方が楽しそうじゃんかよ…。

あぁ、これからどうなんだよ、四葉ヶ丘女子の生徒会は。


そんな事が脳裏に不意に浮かんだけど、急に生徒会室の扉が開き、すぐに風船みたいにはじけた。


「ハロー」

「―理事長…どうしたんさ?」

「いやぁ、何か皆機嫌わるいみたいじゃない?話によると」

「んな事ねぇっつの」

「ナイス救世主っ!!」

「天宮の言葉聞くとやっぱしそうみたいだねぇ…」


梓が相談しにいったのか。
多分そうだなっ。流石アイツ頭がいいよなぁ…っ!

俺ならそんな案出てこなかったぜぇ…!そう思いながら梓の方を見ると、梓の妙な表情が写った。


「…?梓…?どーした?」

「!ん?な、なんでもないよ…!」

「へぇ…あ。まさか東條!お前襲ったんじゃないだろうなァ?」

「ははっ、まさかぁ、僕には玲稀がいるのに」

「誰がお前のだ…」


聞きなれた声。
久々に聞いた声だった、懐かしい。

扉によりかかりながら言ってくる腰まで長い髪の女。


「うっわ、玲稀ちゃん久しぶり…!」

「…あぁ…」

「アレ?玲稀って僕のじゃなかったっけ?」

「私の記憶では違ったと思うぜ」


適当に言葉を交わし、冷蔵庫の方に歩いて行きコップを食器棚から取り出す。
そして、冷蔵庫の中からつくって置いてあるお茶をコップに注ぎ口に含んだ。


「お前は二日酔いの女か」

「っせぇなぁ…、頭いてぇんだよ」

「何?昨日やっぱ1人で飲んでたーん?」

「果てしなくちげぇ」

「ハ?」

「「あ?」」


見事に玲稀と雪の声がかぶった。


「―――何だよ…?」


凝視してみていると玲稀が聞いてくる。
その質問に俺が返した。


「お前らいつ仲直りした…?」

「え、私達いーつ喧嘩したーん?」

「えー…、え、え、ええええ?!」

「せめて日本語しゃべりやがれテメェ」

「な、け、け喧嘩してたじゃんかよ!」


俺が叫ぶと雪はあきれたように言って来る。


「はー?いつよ?」

「この前のパーティー!!」

「………何それ?」

「え、コノ前の中山の―」

「何、ソレ、って言ってるじゃーないの?」


ニコ、と微笑みながらいってきた雪。
その笑みは普段の梓並に怖くて背筋に寒気が走る。

だからそれ以上は聞けなかったけどー…、案外普通そう…?じゃあねぇ?


「なーんだよ、普通じゃーん」


俺が呟きながら梓を見るとなんともいえないくらいの悲しげな顔で下を向いている。
?何だ?
と思って梓の顔を覗き込んだとき玲稀の声が生徒会室に響く。


「いいか、よく聞け、今日は4月29日、近いうちに、何があるか分かるか?」

「もーちじゃろうがぁ」

「はやいねー、もうそんな日かー」

「あー、言われてみればそうだね」


その玲稀達の言葉にはっとする。
そして、俺は叫んだ。


「お前等…!!!」

「あ?」
「は?」
「え?」
「ん?」

「最高に言い奴らだなぁぁぁ!!!!」

「あ?」
「は?」
「え?」
「ん?」

「…まさか、お前等が…!!!」

「俺の誕生日覚えてくれてたなんて…!!!!」


嬉しいなぁ…!!そうだ!5月5日、は俺の誕生日。やっと17歳になれる日…!!!
嬉しくてつい叫んでるとさっきまでばらばらだった声がひとつになる。


『ぁ・・・』
「え・・・」


・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。


「5月1日には聖凛との第二戦の生徒会朧月夜がある、」

「そうだね」

「うん」

「今回の対戦方法は?」

「それだが―」

「うをーーーーい!!!!!!!!」

『ち…っ』


舌打ちかよ?!
そんな突っ込みが綺麗にきまった。


「つか、いい年こいて、誕生日とかむかしてんじゃあねぇよ、莫迦」

「何で人の為に金つかってパーティーしてやんなきゃなんなーいの?」

「というか、椋ちゃんみたいに暇じゃあないんだけどなー」

「僕もイロイロ忙しいからね」

「テメェらいつか覚えとけよ」


やっぱし、こいつ等にそんな優しさを訴えた俺が莫迦だったんだ。と自分に言い聞かせる。
すると玲稀が口を開いた。


「聖凛との第二戦…、わかるか?」

「これで勝たなきゃ後々が厳しいーってこーと?」

「あぁ、聖凛とうちとはドロー、本来ならそんなのが認められるのかさえ疑問点が残る、しかし―…、」

「あの時、君達が勝てなかったのも事実だよねぇ・・・?」


不意に冷ややかな声が聞こえてくる。
それは理事長の声で、理事長の声に玲稀は暫く黙っていたが答える。


「・・・」

「僕はこの学校の勢力をあげてもらうために君達をやとってる、ってことも忘れちゃあダメだよ」

「「「「――」」」」

「…負けは許されないから、わかってるよね?」

「…あぁ…、私達はまだ、負けてもいないし、負けない。」


玲稀が煙草に火をつけながら言う。
俺は時々理事長の目が嫌で嫌でたまらないんだ。なんでか?

…そんなのは決まっている。

――、怖い。
時々見せる冷酷な瞳は何を考えてるのかわからなくなって…。

でもその瞳はどこか玲稀個人へ向けられている気もして…この2人の関係と言うのがどういう物なのかと言う疑問が頭にずっとある。
けど、それを聞けるほど俺達も仲が良い訳じゃなくて、大体、俺達は何もしらないから、

『お互いの事を』『自分の事を』

玲稀の言葉に理事長はニコと笑って言う。


「そう…、なら次のゲーム頑張って、ちなみに対戦の方法は?」

「…聖凛が学校終わり次第にこちらへ来る」

「そう…なら決まったら知らせるんだよ、玲稀」

「…了解」


理事長が部屋から出て行く。
すると、それと同時に玲稀と雪も立ち上がる。


「あ、おい…」

「教室いーくよ」

「…れーちゃん、は?」

「……いかねぇ…」

「そう、か…」


何かが変わり始めていた。
それは、本当に本当に些細なことだけど、何かが変わり始めている。

玲稀と雪もどこかおかしいし、梓もおかしい。

それに、ついていけないのは頭の悪い俺だけで…、




その気持ちはどこかもどかしく俺の心のどこかを支配しだしていた。
















同刻、早瀬邸




「ハル、玲稀がこの前のパーティーに来ていた、というのは本当か?」

「え……、おれは知らないですけど―…?!な、なぁ?」


この家の現主君の言葉に、言葉を詰まらす。


「どうなんだ?大樹」

「―――いいえ?存じ上げていませんが」

「お父様、そんなやつ等の言葉真実おつもりですか?」

「――美亜…」

「私はこの目でしっかりとみましたっ!玲稀があそこにいたのを」

「事実はどうなんだ?ハル、大樹」


鋭い瞳に見透かされるように睨まれ双子の弟ハルは息をつまらせる。
大樹が溜息をはきながらいう。


「…ったく…、そうですね、確かにいた」

「――大樹っ」

「…まだ、くだらない連中と一緒に」

「そうでもなかったですよ?一人は成宮の娘『雪』そして、他の2人の女はたいした家柄ではないですがそれなりに名のある名家の娘達。
…なにより、男達のなかにはちゃんと代議士・神内の息子や宮坂の息子もいました。べつにそんなに言うほどの莫迦共でもないようですが?」

「…アイツには神宮寺がいるんだ」

「まぁ…そうですけど、ネぇ…」

「女に生まれた以上、この家の為につくし生きていくのが道理、というものだろう?」

「・・・・・・そうですね」

「美亜、いくぞ…」

「ハイ、お父様」


すれ違い際に美亜と呼ばれた娘は大樹とハルにむけて勝ち誇ったような笑みをむける。
2人が出て行った後、ハルが大樹へ話しかける。


「!大樹!何でアイツにおしえたんだよ?!玲稀の事」


その言葉に大樹は呟き返した。


「…クソガキが…」






NEXT
----------------------
まさかの、くそがき発言。