生徒会朧月夜 01
          (それは、時に仲間をも捨てる殺し合い)







そのゲームは毎月『満月』の夜と『一』の並ぶ夜に行われる。
生徒会役員の意地とプライドが満月に反映されるように。
誰もかれも、自分の中の譲れないものを守ることだけに必死になって。

血まみれになるんだ。





生徒会朧月夜 ルールブック

command  コマンダー
offence  オフェンス
defenses   ディフェンス
各校の、生徒会代表4名が、コマンダー、オフェンス、ディフェンスの三つの配置につく。
コマンダーは必ず生徒会長とし、残りは、オフェンス・ディフェンスに二・一で分かれる。

分かれる人数に関しては、オフェンスが二でも、ディフェンスが二でも三名の中で分ければ問題はなし。
同じ学校と三回勝負で勝者を決める。先に二勝した所が勝者校。

一回目は本部の決めた方法で勝者校を決める。
二回目・三回目は両対戦校の案を各聞き入れ対戦をする。

コマンダーはオフェンス・ディフェンスからの援護要請がある時のみが、動く事を許される。
ディフェンスはコマンダーを守り、
オフェンスは、相手の学校を攻め攻撃し相手のコマンダーの部屋にたどりつきコマンダーを倒す事が主な仕事。戦闘となったときの怪我の治療費は学校負担とし、死に至ったときは学校側からの保証金がでる。
メンバーの中の誰かが怪我・病気(体調不良)で出場が不可能の時は、
学校側からの補充をするか、メンバー無しで、試合にのぞむことが出来る。
敗退した学校は勝者校の配下となり勝者校に一千万円の賞金を捧げること。
ステージは廃墟などその日によってばらばら。本部から連絡通知がいく。

なお、試合内での男女のハンデなし。






四葉ヶ丘女子学園


「ねみぃ……」

「ぁ、椋先輩!まーた夜ずっとゲームでもしてたんですか?ダメじゃないですか!バスケ部のエースが夜更かしなんかしちゃぁ!!!」

「はは、わりぃわりぃ。ついなー、もうちょいでクリアなんだわー」

「体に無理させないであげてくださいね!!」

「おー」


どこにでもある、バスケ部の風景。
そんな中で後輩に一括されるだらしのない先輩の姿。
彼女の名は、天宮椋。高校2年の16歳、身長178cm・体重59kg。
5月5日生まれのB型、右利き。全国区といわれている位のバスケ部のエース兼部長だ。
そしてこの学校の生徒会【副会長】
性格・男勝りで大雑把。そして、目立ちたがり。


「?あれ?椋どこかいくの?」

「生徒会室に集合かかってるんで行ってきます、先輩達」

「今年の生徒会は大変ねー、ただの学校の為にだけにそこまで」

「はは、そうっすね、行ってきます(意味わかってねーだろ)」






PPPPPPP...
携帯の着信音が鳴り響く。それにその女は出る。


「もしもし…?ぁっ!!雄一くん?こんにちは、どうしたの急に」


女の容姿は可愛い系の美少女。
野村梓。高校2年の16歳、身長160p体重48kg。7月31日生まれ・A型の右利き。

携帯への電話は内容からも感じ取れる通り男から。
しかし、恋人でない。・・・ただのお友達でもない。

あえて言えば、『愛人』と言ったかんじか。
彼女は携帯を2台持ち歩く。1つは普段用もう1つは、『男用』
性格は、男好きの可愛い系の子を演じる美女。そして、四葉ヶ丘女子学園・生徒会の【企画・書記】


「うん、今日の夜?いいよ、じゃあ学校おわったら生徒会室にいるから電話頂戴、うん、じゃあこれから生徒会の集合がかかってるんだ、またね」


P...

電話が終わったのか、電源をきるボタンをぽちっとおし、切る。
ふー…と可愛らしく息を吐きながら髪をかき上げて口を開いた。


「雪(せつ)ちゃん、屋上かなぁー」





屋上

ここは彼女の聖域のようなものだ。口には煙草をくわえている。
フェンス越しにもたれかかって空を見上げる。

彼女の名前は、成宮雪。
高校2年生の16歳、身長167cm体重52kg、9月12日生まれのAB型・右利き。
性格は、おちゃらけてて掴み所の無い遅刻魔。そして、四葉ヶ丘女子学園生徒会【会計】

煙草の煙を口から吐きながらも空いた方の手で握っているのは、首にかけているロケット。
ロケットを軽くみすえながら、呟く。


「いーんかなーぁ…、こんまま、で…」


そう呟いた時、屋上の扉が開かれた。
入ってきたのは梓。
遅刻魔の雪を探して時間までに生徒会会議室までつれていくのは梓の仕事でもあるのだった。
梓は雪の姿をみると、軽く微笑みながら口を開く。


「いたいた、雪ちゃーん、生徒会役員会議始まるよー」

「も、そんな時間?…じゃー、いっきますっかー…、」

「うん、でもその前に煙草はちゃんと灰皿に入れてから行こうね」

「ぁー、本当だ」


梓の指摘に雪は素直に胸ポケットから携帯用の灰皿を出し、口にくわえていた煙草をつぶしながら灰皿なのかに押し込める。
それを確認すると梓はまた微笑んで雪に言う。


「ん。じゃあ、玲稀ちゃんもまってるしいこうっか」

「だーね」





生徒会会議室

――――――
ここでもまた、煙草を吸ってる女がいた。
名前は、『早瀬玲稀』高校2年生の16歳・身長168cm体重53kg、12月31日生まれ・O型の左利き。
四葉女子学園生徒会【生徒会長】であり、成績優秀・容姿端麗のその姿は全校の女子生徒からの憧れの人物なのだ。
玲稀は先ほど理事長から渡されたプリントを右手に持ちながら煙草を口にくわえる。

そして、溜息交じりの面倒臭そうな声で口を開く。


「…どうゆー事…だ、これは…」


そう呟いたその時、生徒会会議室の扉が開かれた。


「玲稀ちゃーん、雪ちゃんつれてきたよー」

「おっす」

「はろ」

「あぁ、とりあえず座れ、つーかお前ら3人できたのか?」


この珍しい3人が一緒に行動を共にしているのはよくある事だが、一緒に行こう、などと言う女の子な考え方は出来ても梓くらいだ。
そう思った玲稀は疑問を迷うことなくぶつけた。


「いや、俺は別できてたら入り口であった」

「なるほどな…、コーヒーいれといた」


そう言って玲稀がコーヒーを先に梓と雪にさしだす。
するとそれを見て椋が声をあげる。


「!うっそ!俺コーヒーのめねぇのしってて」

「テメェのはちゃんとカフェオレにしてやるっつのバカ」

「うっわ、会長やーさーしーいー」

「梓五月蝿い」

「何でー?ねぇ?雪ちゃん仲良きことは良い事よね?」

「そーですねー」

「どでもよさ気だな、お前」

「玲稀、煙草きれちゃったから一本くれない?」

「ああ、それでノイローゼ状態だったのかよ…机の上にあるすでに手を出しているのを好きにしろ」


椋のコーヒーをカフェオレにしながら雪の質問に答える玲稀。
玲稀と雪の煙草は同じで、【セブンスター】を愛用している。おっさん煙草だがバリバリ愛用。
理由は定かではないが玲稀にも雪にも特別なこだわりがあるらしい。しかも、2人ともかなりのヘビースモーカーに近い生き物。
その為、生徒会関係の部屋には必ず灰皿とマッチかライターが机の上においてあるのだった。

雪はセブンスターの箱を手に取り、慣れた手つきで取り出して火をつける。


「…?煙草おいしい?」


不意に素朴な疑問を梓がぶつける。
確かに毎日毎日大量にその歳から吸ってるんだ、よっぽど美味しいのだろう。その質問に玲稀たちは綺麗に答える。


「生命維持装置」
「精神安定剤」


その言葉に「へー…」と言いながら椋が続ける。


「俺はスポーツマンだからそういうのはパスだけどよー、つか学校でどうどうと普通吸うか?」

「すってんじゃん私たち」

「お前らは問題外」

「椋ちゃんもまともなこといえるようになったんだね!」

「梓ひでぇだろ、それ」

「梓の意見に1票」

「じゃ、玲稀の意見に1票」

「――――――――」



玲稀・雪・梓の言葉に軽く落ち込んで後ろをむいてうじうじしだす椋。
そんな椋のこともたいして気にしないで玲稀はカフェオレを椋の前に置き、椋の隣でもあるソファーに腰を下ろす。
それが合図となり今まで『のほほーん』としてた空気が一瞬で冷ややかなものとなった。

そんな中で雪が口を開く。


「今度の相手はぁー?」

「……聖凛男子高等学校の生徒会役員4名」

「男子校かよー、面倒だなそれ」

「でも聖凛ってかなーりのお金持ち美男子達のいく所よん♪」

「そうなの?」


梓の音符をとばした話に珍しく雪が入ってくる。滅多にない事に椋が聞いた。


「?あ?お前んなの興味あったっけか?」

「っつーかぁーねェ―――お金好き…」←会計

「「「―――――――――」」」


一瞬空気が固まった。
にやにやとしながら目は完璧に『福沢諭吉』様がうつっている。

そんな中玲稀がその場の空気を無視して口を開いた。


「つーか、そろそろいいか?本題はいって」

「あー…そだね。んで?今日の対戦方法は?」

「それがよーくわかんねーんだよ…」

「わかんない?って珍しいね?玲稀チャンがどうしたの?プリントそんな分かりづらい?」

「じゃなくて、…」


そういいながら玲稀はプリントを3人に見せる。その内容を見て3人も目を見開く。





聖凛男子高等学校

「六本木のバーの麻薬取引の阻止?!?!」

「ばっ!声でけぇよ!!一般生徒が聞いたらひかれるだろ!!」

「そんなん今更だけどさ…、ってな何?俺らいつからヒーローになった訳?!」

「んなんしるかよ!うっせぇぞ!チビ!」


チビ。その短く人種差別で最も使われる言葉で可愛い顔をした少年が声を荒げた。


「チビつったな!万年発情期のオレンジ頭!無駄にそこらの女で運動してのばした背なんかなにな、俺の身長のことをどうこう言われてたまっかってんだ!んのやろぅ!!!!!」

「あぁん?無駄にだ?あんま調子こくなよ!1回もしたことねーお前にどうこういわれてたまっかぁ?!」

「勝手に俺をそー…!!って何いわせてんだよ!」

「アー?そーの後はなーんだ?言ってごらん、準ちゃーん?」


そんな会話を繰り返す2人に1人の男が呆れ声で呟く。


「お前らのそーゆー行動・言動が、ひかれるんだっつの・・・」


そんな声に同情してか、大人しめの男も続けて口を開いた。


「…とりあえず落ち着いて、座ったらどう?」

「「あぁ?!?!」」


一刀両断。


「…何?」


されたのは、その声を無視して大声を出してしまった2人だった。
ニコリ、と爽やかに微笑まれ短く簡潔に言葉が帰ってくる。


「「すんまっせん!!!!!!!!」」


そういって、土下座しだしたさっきから取っ組み合っている男達。
身長差からいくと本当にまるで男と女のカップルみたいだ。

オレンジの髪の男は、身長が185cmそしてこの学校の副会長である、【朝倉健】高校2年の17歳。
そして、茶髪で身長も164cmしかない上にぱっちりとした目と長いまつ毛。
その女よりも可愛い位の顔の男はこの学校の書記兼企画である高校2年の【城条準】

身長が低い事と女のような顔がかなりのコンプレックスらしく、
毎日女好きの健にからかわれては、このようにジャレあっているのである。(本人達は殴り合ってる)

そして、冷静につっこみをいれたのが生徒会長の【神内純利】
勿論高校2年で、身長178cm髪の毛は銀髪。クールな兄貴的存在。
そして、最後に弱弱しくよめにはいったものの、爽やかな笑顔でさっさと席につかせる所かその場に土下座ささせた男は、【宮坂拓】…会計であり高校2年の男。髪は黒。身長は175pで男にしては人並みの身長だが、その持ち前の腹黒さで影の生徒会長でもある。


「とりあえず話きけ。お前ら」

「へーいへーい」

「健、死んでみる?」

「は、はい…」

「じゃ、純利、プリント呼んでみて」

「あぁ…、『今回の生徒会朧月夜…以下、朧月の対戦方法は、六本木のバーである『Z,Y』で今夜の11時より行われる暴力団同士の麻薬取引の阻止。先に暴力団の団長をひん死状態まで追い込んだ方が勝者校とする。』…だとよ」

「…、それだけ?」

「後は、『武器や道具・作戦の方法については問わない』…だけだな」

「…なんだよーそっれぇ!!」


その生徒会長純利の言葉に準は呆れたようにソファーに深くうずくまる。
そんな中、拓が純利に聞いた。


「それで?対戦相手はどこになるの?」

「―――…えっと、女子高だ『四葉ヶ丘女子』……」


『四葉女子ヶ丘』…その名を聞いた瞬間純利・拓以外の2人は気の抜けたようになる。
健が先に口を開いた。


「まーた、お嬢様だな、麻薬の取引の意味わかんのか?しかも何気にお隣さんじゃね?」

「お隣さんでも滅多に関われないからねー…、良い交流になるんじゃない?」

「殺し合いで交流か?」


拓の呑気な言葉に純利が聞き返す。
その純利の言葉に拓は「ははは…」と意味深に笑うと凛とした声で純利に言う。


「でも、何にしろ、サ?僕達には負けることは許されないよ?特に、四葉ヶ丘さんには」

「…当たり前だ…、俺たちは負けない」


純利のその言葉に他の3人もニヤリと笑みを浮かべた。
その笑みをみて純利が言う。


「では…今夜の10時頃、現地集合」


その言葉に3人は答える。


「「「了解」」」






どいつもこいつも、血まみれになって、己の手を汚してまでして何を守るのか。
自分の命?誇り?プライド?意地…?
それともただの強がりを通すか。

それもと、学園の為。なのか。
でも、そんなことはどうでもいい。最終的に生き残ったやつ等が、



このゲームの勝者なのだから。








NEXT
----------------------
結局みんな、自分が可愛いんだ。