生徒会朧月夜 07
(それは、友でも仲間でもない、チームメイト)
「な、何この騒ぎ・・・っ」
玄関を入ってすぐに倒れてるのは組の男達。
それも拳銃のような物で撃たれた痕がある。
・・・他の組の襲撃か、
そんな不安が頭によぎる。また、意識のある男が口をひらいた。
「い、郁、さま・・・、椋嬢のっ」
「――っ…学生、ですって…、そいつらは何処に行ったの」
「おそらく、地下室・・・、へ」
「・・・・・・・そう・・・、そろそろ・・・潮時ね」
光が見えた。
あの闇の中で一筋の光が。
それが何か知りたくて、追いかけた。
したら、それはあまりにも無情で冷酷で。寂しい人間だった。
そう、早瀬玲稀という人間は私の光だった。
でも、無情な人間だな、と思う反面、どこか優しかった。
「殺すなら殺せ。お前がそれでいいのなら、弾は後残り5つ。ここに来るまでにいくつか使っちまったからな、マ。とりあえず、好きに使え」
「私達がけりつけてやる義理も理由もない。・・・ただ、お前の行き方、興味あるからこの瞳に刻んでやるよ、好きにしろ」
「逃げるのも生き方だ・・・、ただ、逃げてもお前自身は何もかわんねーぞ」
そう、言いながら煙草をとりだして火をつけた玲稀。
「お前の生きる道だ、お前の好きなようにしろ」
しってる?お前の言葉って本当に千人力なんだって。
「椋、「じーさん」
入ってきたじーさんの声とか瞳とかは何時もどおり冷たい。
もう、引き下がれねーし、引き下がりたくないし。
「・・・・」
「俺決めたわ」
「・・・、何をだ・・・、」
「決着つけよーぜ、全てに」
その言葉に、玲稀は笑ってた。雪も梓も笑ってた。
喜んでるのか楽しんでるのかはわかんねーけど、決着をつけよう。
「あいつさ?殺すの・・・?」
準の声。どこか不安げだ。
それに玲稀は答えた。
「アイツのすきなようにすりゃいーさ・・・」
「・・・、でも、チームメイトが・・・もし・・・」
「関係ねぇよ」
「そうそう椋ちゃんのことだし」
「・・・そーれに、アイツは確かに馬鹿でわがままで自己中だーけど・・・、人の苦しみだけはわかる奴ー・・・さ」
好きな人達がいた。
それは、優しくて、あったかくって、太陽みたいな人達だった。
ただ、その人達の太陽は私の弟だった。
太陽の太陽が死んだ。
そうしたら、太陽は泣いてしまった。
だから私が太陽になりたかった。その人たちの太陽に。
だから髪の毛を赤く染めて少しでも太陽みたいに・・・。
子供だましだけど、私にはそれしか出来なかった。
なのに・・・、救えなかった。
助けれなかった。
あそこまで追い詰められていたことに。
「なぁ、じいさん」
「・・・」
「1つ聞くぞ・・・?」
「何だ・・・」
「父さんと母さん・・・、殺したのは郁か?」
郁。あれは母方の親戚。
母の妹、つまり叔母にあたる人だった。次女で生まれ、長女の母さんを恨んでた。
体をじぃさんにうってまでして、上手にじぃさんを動かしてた。
そんな事、馬鹿な私でも知ってたんだ。
その質問にじいさんが、答える。
「しらぬな」
「答えろよ」
「しらぬといっている」
「・・・・・・んじゃ、誰がやった?」
私の声が低くなった。
拳銃を、チャキ・・・、と向けて聞き返す。
「自殺だ」
「違うな、絶対に誰かが後押ししたはずだ」
「・・・」
その会話に梓が思わず口を挟んだ。
「ちょっ!椋ちゃん・・・っ!椋ちゃんのご両親は自殺なんじゃ」
「人影、みたんだよ・・・」
「・・・・・・へぇ・・・?」
「人影・・・?」
「さみぃ・・・、ってか今日、月、気持ち悪・・・っ!」
真っ赤な月の日。
ふいに、その月が私をあざ笑ってる気がして、
すっごい嫌な予感がして…、
走った。
家までは残り200メートル。コノ角を曲がったら家だ。
あの家にいることは確かに痛いけど、
あの家にいることは確かに悲しいけど、
でも、その家には大好きな父さんと母さんがいる。
角を曲がってうちの家前に人影がいた。その人影はうちの家の方をしっかりと見ていた。
私の影に気付くと走って逃げていく。
・・・、何だ。
何だろ、この蟠りは。何だろ、この、とてつもなく嫌な予感は・・・。
「そ、そんなっ、じゃあ、他殺?」
「そんな事わからねぇ、だから俺はきいてんだ。このじいさんに」
「わしはあの事件の事は何一つしらぬ・・・関係ない」
「・・・じいさん、本当に何もしらねぇのか?」
「・・・しらない。と何度言えば分かる」
・・・・・・・、じゃ・・・あの女の勝手な」
「そうよ」
声がした。
その女の声は耳にいつまでも残る声。
どこか母さんと似てるその雰囲気を持つ・・・、何もかもが憎かった。
父さんと母さんが死んでから、【郁】という人物は私に対しての戒めのように私の前に壁のように立ちはだかった。
「郁・・・っ」
「随分と血迷ったことしてくれたみたいね、アンタ」
「は・・・?」
「上にいる男達6名、全員重症よ」
『――――……ア』
玲稀・雪・梓の声がハモった。ついでにいえば聖凛は流石だ。ちゃんと罪悪感があるらしい。
「ア。じゃねぇよ、おい」
「殺してないもーん」
「ちょい弾かすっただけだ、そんなんで死ぬ男達門番にしてんなよな」
「ってかー、誰のタメにしたんだと思ってんのーさ?ってかね、レイ、死んでないかーらねー」
こいつ等、ちっとも悪気ねぇっ!!!
そんな思いが胸をよぎり青筋が浮かぶ。
ち、畜生…っ!
「あら、お友達がやらかしてくれたの?」
「そーでーす」
「でも、椋のせいでここまでするに発展しましたー」
「というか、わりっすね私達・・・こっちの世界の事はあんまり詳しくないんですわー」
「じゃあ、教えて差し上げるわ」
チャキ・・・、と音が響く。
本物の銃を郁は胸の内ぽけっとから取り出し、玲稀たちに向ける。
「さって、物騒なおねえさんだねぇ・・・」
「ってかさ?私達何も悪いことしてないじゃんか・・・」
「あー・・・もう、12時ー。おなかへったかもー、アズ」
12時。その言葉を聴いて滅多に叫ばない雪が声を荒げた。
「12時?!?!ヒルメロ始まるまで後1時間・・・!!」
「やっべ、録画忘れてた。さっさと終わらせろや、テメェ」
「!本当だ!!ちょっと生徒会室のあの大きいTVで見るのが醍醐味なんだよ・・・!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
一気にその場に沈黙が走った。
なぜか?それはこの状況。
@ 拳銃をつきつけられてる少女3人。
A 男4人は使い物にきっとならない。
B なのにその場で『ヒルメロ』の言葉。
C 予約し忘れたのでさっさと終わらせろ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
「テメェらな!黙ってきいてたら聖凛サイドのがよっぽど仲間みてぇじゃねぇか・・・!」
「うっせぇ!テメェよか昼メロれで【レイ】と【ヨウイチ】の遺産争いの行方のが気になるんじゃ・・・!!」
「せ、雪ちゃん!と、とりあえず、落ち着いて・・・!キャラがっ!」
「しかも遺産争いかよ・・・」
「うっさいぞ純利益」
「純利益じゃねぇ!純利だっつんだ!!」
「私は純利益の方がすきなんでーすよ。わかりますか?!」
「しるかっ!!」
「わー、純利がそこまで怒るのも珍しいよねぇ」
「マジだ、おもしれー」
「ぇ、かわい・・・そう、じゃ」
雪は昼メロ大好き人間なわけでは、ない。
しかし、金絡みの昼メロだど魅入って魅入って。
なんというか生徒会室で物音1つたてたら、【殺される】
それに影響され玲稀と梓も暇つぶしで見てた。あの2人の事だから全話見ないと分からない所が出来てつまらなくなるのだろう。
というか、な・・・、
「いい加減にしろーー…!!!!!」
『あ…?』
悪気や自覚が一切ないこの女達。
本当に俺の扱いはかわいそうだ。
「んで、話を戻す、テメェら黙って聞いてろ」
『へいへい・・・』
「(しぶしぶかよ)・・・さて、と。郁、その物騒なもん下ろせ」
「誰に命令してるのかしらね・・・?」
「テメェだよ」
「・・・口と体だけは成長して頭は空っぽなのかしら?」
「そーでーす」
雪がひょいっと会話にハイって来た。
「テメェ黙っとけ!!!」
「へいへい、ってかレイとヨウイチの遺産争いの結果―・・・」
「雪」
「んあ?」
「理事長の野郎にメールで頼んだ、今。多分大丈夫」
「!やった・・・!こういう時、役にたつーじゃん!あのおっさん!!」
「だから黙れっつの・・・!!」
そんな会話が繰り広げられると、郁の声が響く。
「は・・・はっはは・・・ふふふ・・・、ははっ」
「ぁ、壊れた?あのおばさん?」
「梓ちゃんよ?女はいつまでたってもお姉さんってよんでやれよ」
「健くんいいんだ、アズ格下の女には興味ないから」
「・・・・・・ちょっと黙ってろ」
玲稀の声に全員は黙る。
私じゃ無視なのに玲稀の一言で全員黙るのには多少……いや、かなり納得いかないけど、仕方ない。
「何がおかしい」
「随分面白いお友達をお持ちのようね、椋」
「軽々しくよぶんじゃねぇよ、私の名前」
「・・・・・・・・」
私の返答に軽く眉をしかめて下を向いた郁。
何だ、この変な感じ。
「・・・もしかして、あの、女」
「ぇ?」
玲稀の声が軽く後ろから聞こえた。
それに続く準の声。すると、玲稀は「っしょ」と立ち上がって、歩いて私の所へやってくる。
「椋下がってろ」
「は・・・れ、玲稀」
「おい、おばさん
「な、何よ」
「お前、本当は何隠してやがんだ」
「―っ!」
玲稀の言葉に明らかな反応を見せた。郁。
そう、この顔。この表情だ。
おかしい。
どこかとっても悲しそうで、懐かしい。
「な、何を言っているの?」
「何か隠してこいつが救われるとでも思ってるのか?」
「―っ」
「ついでに言えば、おい、じいさん。テメェも何か知ってんだろ」
「―・・・、たいした娘だな、いつ気付いた」
「元々おかしいとは思ってた。クサでコイツを薬中にしたいなら量的には少なすぎる。
しかも、監禁して1日たってからしなくても、スグにいぶして薬にかけりゃ、今頃には薬中になってただろう」
「そうそ、それにさー?」
それに続いて雪と梓も口を開く。
「おかしいでーしょ?憎いなら殺せばいいじゃん、やーさんなんだーし?」
「ってか、憎いのは私達もわかるもんね?私なんていつも頭ぶち抜いてやりたいと思ってるよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・テメェらな・・・」
「何はどうあれ、一番の問題が―」
玲稀の言葉を聴いた途端、私は目を見開く。
「弾。はいってねぇんじゃねぇの?それ」
「―っ!なっ!何を!」
「うわー。そのあわてよう。本当みたいだね」
郁の表情に、ずっと黙ってみていた、聖凛の中から拓が口を開く。
それに、目を見開いて健が拓に言う。
「こらっ!拓・・・!ああいうのにはママは関わっちゃいけないって言ってるでしょ!!」
「それだれ、健・・・」
「や。気分で、」
拓の言葉に追い討ちをかけられたように拳銃をその場に落とす。
―。まさか、ンナ訳。
こいつらは俺が嫌いなんだろ?
「もう一度言うぞ、コイツに真実を隠して、もしもコイツが救われると思ってるならそれは違う」
「・・・コイツは自分の過去のワダカマリをなくしにきたんだ。自分の過去に決着つけにきたんだ」
「それを阻むのはアンタらの自由さ。」
「でもな、」
「それはコイツ自身のためじゃない、アンタらの自己満足だ」
前からずっと思ってた。
何で私の唯一の肉親達は私にこんなにも冷たいのかと。
何でこんなにも私を嫌うのかと。
でも、それが、私のためにしてくれてたことだとしたら…。
もし、そうだとしたら…、
私…。
すっげぇ、ださいじゃん…。
前からずっと思ってた。
何でコイツの言葉はこんなにも私達の中にある迷いを打ち消してくれるんだろう。
そして、何で、こんなに…、
こんなに、私達はその言葉に左右されてしまうのかと。
ぱた…っ
私はその場に座り込む。
梓が、私に駆け寄ってきた。
「っ!だ、大丈夫…っ!?椋ちゃん…っ」
梓が俺に近づいてきた瞬間、乾いた音が響いた。
無意識のうちに梓の腕を払っていた。
「――!」
「真実を隠して憎しみがなくなるわけじゃない、むしろソノ逆だー」
「あんさ?さっさと吐いちゃいなよ、おばさんと、おじいさん」
梓の声が、玲稀の声をさえぎった。
「私の知ってる天宮椋は生憎ながらも馬鹿で、無鉄砲で自己中で、俺様で、目立ちたがり屋で、でも、」
「でも、無意識にこんな事するような人間ではないのですよね」
「ありゃ、きれたぜ」
玲稀へ雪のの耳打ちが聞こえる。
玲稀も雪も軽く顔を青くしている。あぁ、これからどうなるのか、と。
しかし、玲稀が口を開き、梓に言う。
「・・・梓。おさえろ」
「でもっ!!」
「おさえろ」
玲稀が梓に再度言い聞かすようにゆっくりとした口調で言う。
すると、梓は軽く不満気な表情をみせたがスグに「・・・うん」と首を縦にふった。
「椋、どうする」
雪の声。
どうする、じゃねぇよ。んなもん決まってんだろ。
「教えてくれ、2年前のあの日。何があったのか、何を隠してんだよ・・・、テメェら」
私は逃げない。もう、絶対に。
「もう言うしかないみたい、ね・・・」
その郁の言葉の後に、語られた。
私に隠された真実。
私の真実。
「2年前、椋・・・貴方の両親達は貴方の弟の達也が死んでから、信じられないくらい変わったわ」
「・・・かわ、った?」
拓が聞き返した。
「・・・えぇ、酷く顔はやつれ、仕事もしなくなり、酒に走った、そして椋・・・貴方自身への虐待を始めた」
「虐待、ってそれさっきの」
「あぁ」
何を話したのかは知らないが、拓が玲稀に聞き、玲稀も短く返す。
「つらかったでしょ・・・、椋」
「――っ!ちげぇ!!!」
郁の言葉にたまらなく叫んだ。
「椋」
「つらくなんかなかったっ、俺を殴ったら父さんも母さんも泣かないでいたんだっ!つらい訳ねぇっ!」
そう、皆つらかっただろうって、でも違う。父さんと母さんはたまに優しい時もあった。
優しく抱きしめてくれる時が――。
それだけで、私は良かった。
「許せなかったっ!!!椋だって頑張ってたっ!勉強もバスケットも空手も柔道も剣道も・・・・・・っ!」
今度は郁が声を荒げた。
「なのに…、なのに、あの2人はいっつも達也ばかりで、ソノ上達也が死んだ後は椋に『お前が死ねばよかった』…そんな事いって」
「――お、おい、お前・・・まさ、か―。」
郁の声に私の中であきらかな不安がよぎる。
「椋っ!貴方は何時も泣いてた。部屋の片隅でね・・・!私はいつでも貴方を見てたわ・・・!だからこそ、許せなかったっ!」
「――――っ」
声にならない。何だこの気持ちは。
何で、何で、…コイツが私のために泣いてる…っ。
私の為に―、
私の1番聞きたいことを玲稀が聞いてくれた。
「椋のご両親、殺害したのか?」
「違うわっ!私じゃない・・・!あの2人は列記とした自殺・・・よ、」
「・・・だとよ」
その郁の返事に玲稀は俺の頭に手をおいて呟いた。
ずっと、殺されたんだと思ってた。
ずっとずっと、父さんも母さんもこの女に殺されたんだと思ってた。
何、私。ちょー、だせぇ…。
「郁は、止めようとした」
「―!おじさまっ!その事は―」
「郁はお前さんの父さんと母さんを止めようとしたのさ」
「―っ!んな」
「しかし」
「こんな事してもどうにもならないじゃないのっ!姉さん!兄義さん」
「っ、許して、」
「―、な、何でよっ!椋が・・・、椋がどれだけ貴方達の為に頑張ってると―」
「―、ごめんなさいね、郁、これは椋のためなの」
「椋、の・・・?」
「あの子に伝えて、こんな父さんと母さんでごめんなさい、って―」
「そして、・・・貴方は良い子よ、ってね」
「ごめんよ、郁ちゃん、俺達はこれ以上アイツと一緒にいるとー」
「あの子を壊してしまう」
何かわかんないけど瞳から水みたいなのが大粒で流れ落ちてくる。
何でかわかんないけど―、
私は父さんにも母さんにもおばさんにもじいさんにも―…、みんなに、おもわれてた。
「お前にはすまないことをした。少しでも私達を恨んで両親から得られなかった愛を補ってくれば…、
・・・啓一と愛を恨まないでくれれば…と思ってた。しかし、ソレは逆効果だったようだな…すまなかった…」
「ごめんなさい・・・っ!ごめんなさいっ!!椋!」
2人して頭を下げる。
私は…、
「馬鹿じゃんよ、私」
「―!!!そんな事―」
私の言葉を聴いて郁が口を開いた。
しかし、スグにその言葉はアイツによってさえぎられる。
「知ってる」
「―!なっ、何を―!貴方」
「自分だけ・・・、自分だけ・・・っていつもいつも、思って、でも結局は、いつも誰かに助けられて、愛されて―・・・、支えられて―」
「―そうかもな、でも、少なくても私はお前に救われたこともアル」
「―――――-っ!」
「まぁ、100万回に1回くらいの確立だけどな」そう付け足しながら、玲稀はまた煙草をズボンの後ろポケットから取り出した。
火をつけながら、私に言う。
「色んな人々の命や想い・・・、テメェなら、背負ってけんだろうが、恥じねぇように生きな、」
「・・・私、何かに、出来るのかよ」
「時には下ろせばいいさ、重くなったらな。けど、私が言いたいのは―、」
「今まで通り生きてきゃーいんだよ。変わることは―・・・マ。何一つないさ、」
「―――」
本当にコイツの言葉は千人力だ。
何もかもがコイツの言葉で、決められる。
その時雪が煙草をくわえながら玲稀のところへやってくる。
「えー、でーも、馬鹿さ加減は直してもらわないと困るんじゃねーいの?」
「無理だろ、私は元々出来ない奴にはそういう事は求めないんだよ」
「うわー、さっすがー、火、頂戴」
「ん」
「椋ちゃん、お帰り」
未だ座り込んだままの私に梓が手を差し出した。
きめ細かい肌の真っ白な手に赤いはれのようなものが出来てる。
「あ、梓ー・・・、それ、ごめん、な?」
「あぁ・・・これ?本当だよね、どうしてあげようか?椋ちゃん」
「え」
「火あぶりー」
「もっとコイツにはきついだろ、1週間丸々朝昼晩で『サラダ』」
「うそっ!ちょ・・・っ!お、おい―!!!」
「何なの・・・あの子達は」
「でも、アレが彼女達なんですよ」
「―?貴方は」
「あぁ!!!!!」
急に現れた男に健が叫ぶ。
あぁ?と思って後ろを4人いっせいに振り向く。
「四葉ヶ丘女子学園理事長の『東條』です、よろしくお願いします」
「り、理事長・・・っ!?!?」
「やぁ」
ニコっと梓にも負けず劣らずな笑顔でこっちを振り向く。
「何しに来たんだよ」
「やだなー、玲稀、愛まで確かめ合った仲なのにー」
「いつどこでどんな風に愛を確かめあった?この野郎」
「・・・・・・・っ」
「う、うっわ、お前らが変なこと言うから準が傷付いちまったじゃねぇかよっ!!」
「うわー、青春の清純だねぇ…、」
「・・・お前何言ってんだよ」
「で?何しにきたんだよ?マジで、理事長さん」
健の質問に理事長は「ぇ?だって―」といいながら答える。
「だって、君達結果聞きにきたんでしょ?朧月夜の」
『あ』
「結果は」
「引き分け」
『『は?』』
珍しい、本当に珍しい。
四葉と聖凛のハンノウが全く一緒。
「だーかーらネ。引き分け、ドローだって、本部が」
「ど、ドロー…て…」
「だから勝敗はこの後の2ゲームとった方の勝ち」
「―、マジかよ…」
「何、俺達の今日一日のこの無駄な過ごし方」
「でも、俺はよかった・・・!」
「おぉ、準選手ちょっと積極的に出てみましたー」
「んなっ!う、うっせぇよ!!」
「ってかマジでー、かよ」
「ってかコノ前の奴って椋ちゃんのせい?」
「でーしょ?」
「ってか、おい!理事長!昼メロは?!?!」
「?何のこと?」
「――――…」
「せ!雪隊長!時刻はすでに一時3分前です…っ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・椋…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、そこのウドの大木…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そこの赤髪…、」
「え、えぇえええぇぇぇえ!?!?!、お、俺!?!?」
『テメェだろ…』
ありえないくらい無表情の玲稀。
ありえないくらい睨んでる雪。
ありえないくらい、爽やかな梓の笑み。
「!ここってお仕置き部屋だってよ?椋ちゃん?」
「色々とあるじゃねぇの良い趣味した物が」
「―…さってと、」
『悪い子は教育しなおしますか』
「タイムーーー!!ぺるぷみーー…!!!」
「さっきあの子達が何なのか、と聞きましたね?」
「?、は、はい…」
「あの子達は過去に何かしらのトラブルがあるんです」
「トラブル…?」
「大切な者を失っている」
「――…、だからあんな事いえたんだな…、特にあの娘、は…」
「はは…っ、あの子はもっと特殊ですけどね…」
「?っ、き、気になっていたのだけど、あ、貴方達は椋とはどういう関係、なの…?というか、何者…」
不意に地下室に響く郁の質問。一瞬、固まった感じの玲稀たち。
「…こいつ、の何なのか…ね…」
玲稀の足が私の背中の上に置かれる。
すると続いて、雪が私の髪の毛を手で掴んだ、
「…飼い主…?」
「ははっ、それ楽しいかも…っ!!!椋ーちゃん、ここのツボはねー、頭にきくんだよーー…!!」
「いってぇぇぇ!!おい!!何!そこ…!ちょ…!」
「足ツボ」
「――死ぬ―――!!!!!!!」
「「死ねよ」」
「あぁ、私は四葉ヶ丘女子生徒会書記・企画の【野村 梓】です」
「いってぇ…!そこいてぇ…!!」
「ポチー、大変だなー、右脳が弱ってるーってーよー。えっと、同じく四葉女子生徒会会計の【成宮 雪】でーす」
「…うるせぇ…根性焼きいれるか?お前?」
「か・・・っ!勘弁っ!!!!」
「んじゃ、黙れ。四葉女子生徒会会長【早瀬玲稀】」
「・・・早瀬、」
じいさんの呟きは誰にも聞こえない。
そして、梓が口を開いた。
「人呼んでビューティー生徒会★っでっす」
「い・・・・っ!!!、そ、そこはやばいってぇぇぇ…!!!!!!!」
これがいつもの会話。
これがいつもの私達。
これが…四葉ヶ丘女子学園の生徒会本部なんだ。
そして、これが私の掴んだ光。
NEXT
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百人の友達よりも一人の親友の方が大事だと思う。